2011年度長尾真記念特別賞

2011年度長尾真記念特別賞の表彰


稲見

稲見 昌彦 君(正会員)

「身体性インタラクションに基づくエンタテインメントコンピューティングの研究」

1999年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了. 博士(工学). 同大学助手, 電気通信大学大学教授, JST さきがけ研究者, MITコンピュータ科学・人工知能研究所客員科学者等を経て, 2008年4月より慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授. JST ERATO五十嵐デザインインタフェースプロジェクトグループリーダー, 日本バーチャルリアリティ学会理事, コンピュータエンターテインメント協会理事, 情報処理学会エンタテインメントコンピューティング研究会主査等を歴任. 自在化工学, エンタテインメント工学に興味を持つ. 本会山下記念研究賞・論文賞, IEEE Virtual Reality Best Paper Award, 米TIME誌Coolest Inventions of the Year, 文部科学大臣表彰 若手科学者賞, 義塾賞等本賞を含めて26件受賞.

[推薦理由]
稲見昌彦君は, 五感への提示技術と身体と環境の計測技術の発明により, 独創的なインタフェースを作り, 人が楽しくなるようなインタラクションと情報環境の創出につなげている. 実空間に情報空間を遮蔽矛盾なく自然に重ねることを可能にする「再帰性投影技術」, ロボットの身体性を利用したインタフェース, わたの変形計測による生活用品のインタフェース化といった独創的な提示・計測技術を多数発明してきた. 同君の研究は, 情報処理の対象と目的を広げ, 生活の質(QoL)を向上させる技術としての情報処理の実現に繋がるものであり, エンタテインメントコンピューティングという新しい分野の確立に不可欠で国際的にも高く評価されており, 本賞を贈るにふさわしい.
板東

坂東 幸浩 君(正会員)

「高臨場感通信のための次世代映像符号化に関する先駆的研究」

2000年から2002年, 日本学術振興会特別研究員. 2002年, 九州大学大学院システム情報科学研究科知能システム学専攻博士後期課程修了. 同年, 日本電信電話株式会社 入社. 入社後は, NTTサイバースペース研究所にて, 次世代映像フォーマットのための高能率符号化アルゴリズム, MPEG国際標準化活動などに従事. 2011年より, NTTアドバンステクノロジ株式会社 担当課長. 2005年情報処理学会 山下記念研究賞, 2006年映像情報メディア学会 優秀研究発表賞, 2008年FIT船井ベストペーパー賞, 2009年情報処理学会 全国大会優秀賞受賞. 博士(工学). 情報処理学会, 電子情報通信学会, IEEE各会員.

[推薦理由]
高臨場感通信を実現するために, 大容量の高画質映像を伝送するための圧縮符号化方式へのニーズが高まっている .  坂東幸浩君は, 高画質化に必要な各要素を視覚の検知限界まで高めた次世代高画質映像を目標に据え, こうした高画質映像に対する圧縮符号化方法を検討してきた. その検討結果は, 大幅な符号化性能向上を実現した有効性と共に, 符号化制御に対する理論的な指針を与えた先進性の観点から, 国内外において高い評価を受けている. さらに, 著名な国際会議において特別セッションを企画・運営するなど, 国際的なリーダシップも発揮しており, 本賞を贈るにふさわしい.

峰野

峰野 博史 君(正会員)

「ヘテロジニアスネットワークコンバージェンスに関する研究」

1997年静岡大学工学部情報知識工学科卒業. 1999年同大学大学院理工学研究科計算機工学専攻博士前期課程修了. 同年日本電信電話株式会社 入社. NTTサービスインテグレーション基盤研究所を経て, 2002年10月より静岡大学情報学部助手. 2006年九州大学大学院システム情報科学府博士(工学). 2011年4月より静岡大学情報学部准教授. モバイルコンピューティング, センサネットワーク応用に関する研究に従事. 2001年NTTサービスインテグレーション基盤研究所所長表彰, 2007年船井情報科学奨励賞, 2009年電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞, 2011年浜松電子工学奨励会高柳研究奨励賞等を受賞. 情報処理学会, 電子情報通信学会, IEEE, ACM各会員.

[推薦理由]
ユビキタス・ネットワーク社会におけるICT利活用の高度化や, 多彩なサービスの実現には, 対象物の状況・状態やそれらの周辺環境など, 様々な状況や環境を自動的に認識して, 自律的な情報流通に基づいて適切な制御を実現する技術が必要不可欠である. 峰野博史君は, 多種多様なセンサ/アクチュエータネットワーク, ホームネットワーク等を連携させるヘテロジニアスネットワークコンバージェンスに関する研究に従事し, 社会が求める具体的なアプリケーション創出を意識した応用分野への展開を目指した実証的研究開発を進めている. 数多くの後続研究を生み出し, 産業界への貢献も大きく, 本賞を贈るにふさわしい.