「世界最先端IT国家創造宣言」に対する意見

2016年4月28日
一般社団法人 情報処理学会
会 長  富田 達夫

以下のとおり,2016年4月28日付で意見書を提出しましたので,ご報告いたします.
(協力:エンタテインメントコンピューティング(EC)研究会)


2016年4月28日
内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室 御中
一般社団法人 情報処理学会
会 長  富田 達夫

情報処理学会は,平成25年6月の「世界最先端IT国家創造宣言」に対する意見募集,および平成26年6月,平成27年5月の「同改定(案)」に対する意見募集に応じて継続して意見を提出してきており,今回の意見募集についても学会内で意見を募りました.

これまでに提出した意見でも繰り返し述べているように,情報処理学会はIT利活用を成長戦略の柱と位置づける「創造宣言」を大いに支持し,学術・科学技術・教育の側面から積極的に貢献してゆく所存です.そして,これまでの意見の多くはパブリックコメントの修正,具体的な成果等様々な形で反映され,本意見についても,今後の「創造宣言」推進方策や改訂検討のご参考になれば幸いです.

(1)[I.2.(1) ]について,技術的特異点を意識した社会変革の中心としての役割の明記
人工知能が人間の能力を超えることによってもたらされる技術的特異点(Singularity)に関する議論が高まりを見せています.当初,技術的特異点の技術レベルの実現は10年後以降,社会構造の変革は30年先,とまだ先のことと予測されていましたが,アルファ碁(AlphaGo)が世界トップクラスの囲碁棋士李世ドル氏に勝利したことに代表されるよう,予測よりも速く技術革新が進んでいることがわかります.工場制機械工業の導入により,18世紀半ばから19世紀にかけて,社会構造が大きく変革した産業革命が知られていますが,技術的特異点においては,人間にしかできないと思われていた知的生産を機械が代替し,産業革命以上のインパクトをもった社会構造の変化がもたらされることが予想されています.具体的には,技術的特異点以降の社会においては,便利・快適さに加えて,我々人間自身の体験や経験を,より深く,豊かなものへとしていく価値観が醸成され,そのことを支援し,加速する取組みに対するニーズが以前にも増して高まると予想されます.今年度の我が国の経済産業政策の重点課題の1つとして,「ITによる産業構造,経済社会の革新」があげられ,AI,ビッグデータ,IoTなどの新たな情報技術の重要性が認識されています.本学会としてもこれらの新しい情報技術の利活用を進めることにより,いろいろな産業分野におけるイノベーション創出が加速するものと確信しております.我が国の未来志向のIT施策としては,小等中等教育における情報教育の革新や技術的特異点を見据えての新しい情報技術と人間社会とのあり方について倫理的,法的,社会的議論をより活発にしていくとともに,人々のQoL向上をめざし,「体験や経験」などを対象とした新しい情報技術を確立し,世界をリードしていくことが重要であると考えます.

(2)[III.1.(3), III.2.(2)]に関して,オープンデータ活用のためのクラウド基盤構築
オープンデータの利活用についてIII.1(3)では,地域活用事例の横展開に関する支援や,幅広い用途に一元的にオープン化する基盤構築の推進が明記されています.一方III.2(2)では,中小企業が積極的にクラウド基盤を活用することでIT利活用の芽を広く掘り起こすことを目的として,その体制を整備することが明記されています.しかしながら,オープンデータの普及や利活用について,その手段として有効なクラウドの利用については明記されていません.例えば,オープンサイエンスの枠組みでは,IT技術の発展のためにはクラウドを活用したオープンデータの普及が重要とされております.したがって本パブリックコメントでは,データベースとしてオープンとするだけでなく,クラウドとして可用性の高い基盤構築の検討を願います.

(3)[III.1]について,長期安定運用について
昨年度の回答でもオープンデータの鮮度と継続的な利用の確保の重要性は認識されているとのことでしたが,パブリックコメントとしては明記されていません.昨年度も述べましたが,データを原則オープン化し,利用ルール・アクセスインタフェース・データカタログを整備して利活用を推進することは,大いに賛成します.しかし,せっかくの公共オープンデータも,時間が経過すると利用できなくなってしまう状況に陥るとその価値が大きく損なわれてしまいます.公共データの多くは,長期継続的に利用できてこそ活用価値が最大化できるものと考えます.各々のデータ発生元の努力に任せるだけでは長期継続してデータを更新し,情報鮮度の高い公共データを公開し続けることは難しいと想定されますので,政府・自治体として統一した安定的データアーカイブの仕組みを設けることを検討願います.

(4)[IV.1.(2)]に関して,国際交流に基づいた人材育成の機会設置
日本のITの社会をリードし,世界にも通用するIT人材の創出にて,若年層の育成方法など,国内で実施される人材育成については具体的に記述されている一方,国外からの人材の招聘についてはほとんど記載がございません.世界にも通用する人材を育成するには,国際的水準の人材交流ならびに経験が重要と考えます.したがってその機会を増やすため,海外の有能な若手人材を国内に招聘することならびに国内の若手人材を海外に留学させることの検討を願います.

(5)[全体を通して]KPIの定量化
進捗状況を定量的に評価して,施策の実施状況を客観的に評価することについては賛同します.しかしながら,いくつかのKPIについては,果たして定量的に評価可能であるか,疑問が残ります.再度検討いただき,明記いただくことを願います.例えば,III.1.(2)「パーソナルデータ利活用に関連した制度見直しの達成状況」,III.1.(3)「地方公共団体,独立行政法人・公益企業等におけるオープンデータ取組状況」等,III.2.(3)「IT を活用したハローワーク等の就職支援機能の強化」,III.3.(3)「高齢者等の移動支援」等が該当します.
以上

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