「平滑化処理の繰り返しによるグラフカットを用いた画像セグメンテーション」

平成21年度論文賞受賞者の紹介

「平滑化処理の繰り返しによるグラフカットを用いた画像セグメンテーション」[情報処理学会論文誌 コンピュータビジョンとイメージメディア Vol.1, No.2, pp.10-20]

[論文概要]

 本論文では,平滑化度合いを変化させ,繰り返し処理によるGraph Cutsを用いた高精度な画像セグメンテーション法を提案している.ガウシアンフィルタの平滑化度合いを変化させた画像に対し,平滑化度合いが大きなものからGraph Cutsを行い,そのセグメンテーション結果をグラフのt-linkに反映させ,次の平滑化度合いのセグメンテーションに利用する.これらを繰り返し処理することにより,大域的なセグメンテーションから段階的に局所的なセグメンテーションを行う.画像に複雑なエッジが存在する場合でも頑健なセグメンテーションが可能であることを確認した.



[推薦理由]

 本論文は,1枚の画像から目的の領域を抽出する画像セグメンテーション手法に関するものである.従来のグラフカット法の改良として,段階的に平滑度合いが異なる入力画像群を順次用いることによって大域的セグメンテーションを徐々に局所化していく着想は,これまでに類をみない全く新しいものである.また,その効果は丁寧な実験によって確認されており,各種従来法と比較した誤検出率の改善結果にも明確に表れている.また論文中ではGMMを用いた色分布確率の表現方法が数学モデルによって詳細に説明され,また平滑化画像の作成においてもダウンサンプリングを利用した効率化の工夫など,実用的手法として高い完成度が認められる.以上のことから,本論文は独創性,有用性ならびに完成度の観点で卓越しており,論文賞に推薦する.

永橋 知行 君

 2005 年中部大学工学部情報工学科卒業.2007 年中部大学大学院博士前期課程修了.現在中部大学大学院博士後期課程に在籍.コンピュータビジョン,動画像処理の研究に従事.2005 年度ロボカップ研究賞,2007 年度MIRU学生賞各受賞.

藤吉 弘亘 君

 1997 年中部大学大学院博士後期課程了.1997~2000 年米カーネギーメロン大学ロボット工学研究所Postdoctoral Fellow.2000 年中部大学講師を経て2004 年より同大准教授.2006 年米カーネギーメロン大学ロボット工学研究所客員研究員.工博. 計算機視覚,動画像処理,パターン認識・理解の研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,IEEE各会員.2005 年度ロボカップ研究賞.平成21年度山下記念研究賞.

 

 

金出 武雄 君

 1973 年京大工博,同大学・情報・助手.1980 年カーネギーメロン大計算機科学科・ロボット研究所高等研究員,1985 年同教授,1992~2001同大学ロボット研究所所長,2006 年より同生活の質工学研究センターセンター長.産業技術総合研究所デジタルヒューマン研究センター兼任.National Academy of Engineering 外国特別会員,IEEE, ACM, AAAI, ロボット学会の各フェロー.C&C 賞,Joseph Engilberger賞,FIT2004船井業績賞,JARA賞,人工知能学会業績賞,Marr賞など各受賞.