「Acquisition and Rectification of Shape Data Obtained by a Moving Range Sensor」[論文誌Vol.48, No.SIG9(C

平成19年度論文賞受賞者の紹介

「Acquisition and Rectification of Shape Data Obtained by a Moving Range Sensor」

[論文概要]
 巨大物体の計測では,空中からの計測が効果的な計測手法のひとつと考えられている.そのため,われわれは気球にレンジセンサを搭載した計測システムを開発した.しかし,このような計測形態では,計測中にレンジセンサが動くため,距離データが歪んでしまう.そこで,本論文では,このような移動型レンジセンサから得られる歪んだ距離データを補正する2つの手法を提案した.ひとつは計測プラットフォームにビデオカメラを搭載し,画像列と歪んだ距離データとを組み合わせることによって,高精度な運動パラメータを求め,歪みを補正する手法である.もうひとつは,地上固定型のレンジセンサによるデータとの位置合わせを利用することによって,移動型レンジセンサのデータを補正する手法である.これらの手法を実際に巨大文化遺跡の計測に適用し,デジタルアーカイブ化に有効であることを示した.

[推薦理由]
 本論文は、世界遺産の遺跡のような大規模な対象の全体形状を、Floating Laser Range Sensor(FLRS)を用いて、細部まで極めて正確に獲得する方法を提案している。気球にレーザ測距装置を搭載したFLRSはその機構上揺動が不可避であり、従来の手法では正確な三次元形状を復元することは困難であった。著者らは揺動時に見られる測量結果の特性を数学的にモデル化することに成功し、それに基づいて実際に大地に広がる遺跡のような対象を全て三次元モデルとして再構成できることを実証した。本論文が提案する手法は世界的
に見ても第一線の科学技術であり、理論の美しさと実効性のある実証とが両立されている点、および情報処理技術の成果を一般社会に還元している点、の各方面から見て、論文賞に相応しい技術であると判断する。よって、本論文を論文賞に強く推薦するものである。

阪野 貴彦 君  1994年 東大・工・航空宇宙工卒.1996年 同大大学院・工・航空宇宙工修了.同年 警察庁科学警察研究所.2005年 日本学術振興会特別研究員.2006年 東大大学院・情報理工・電子情報学修了.博士(情報理工学).現在,東大生産技術研究所.主として3次元計測・復元,動画像解析に関する研究に従事.平成17年度情報処理学会山下記念研究賞受賞. IEEE,情報処理学会 各会員

池内 克史 君  1973年 京大・工・機械卒.1978年 東大大学院・工・情報工学博士了.工学博士.MIT 人工知能研究所,電総研,CMU 計算機科学部を経て,1996年 より東京大学生産技術研究所教授.現在,同大情報学環教授.人間の視覚機能,明るさ解析,物体認識,人間による組立作業の自動認識,文化財のディジタル保存,ITS などの研究に従事.論文賞(ICCV-90, CVPR-91, AIJ-92, ロボット学会誌-97, IEEE R\&A 誌-98, 情報処理学会論文賞-H17)等受賞.人工知能学会,日本ロボット学会,日本バーチャルリアリティ学会,OSA,IEEE 各会員(Fellow)