「ダイナミックタイムワーピングのための類似探索手法」(Vol.45,No.SIG4(TOD21))

平成16年度論文賞受賞者の紹介

「ダイナミックタイムワーピングのための類似探索手法」(Vol.45,No.SIG4(TOD21))

[論文概要]
 気象学,天体物理学,地質学,マルチメディア,経済など,時系列データは数多くの分野で用いられている.それらの中では,時系列データのシーケンス同士を比較して,その類似性,すなわち距離を評価することが頻繁に行われている.ダイナミックタイムワーピングは,各々のシーケンスの中で時間軸を柔軟に変化させて距離を算出することができるため,近年数多くのアプリケーションで用いられている.そこで,本論文ではダイナミックタイムワーピングのための高速類似探索手法を提案する.提案手法は効率的に類似シーケンスを探索することができ,さらに探索漏れがないことを保証する.

[推薦理由]
 本論文は気象学や経済学、マルチメディアなど応用範囲の広がりつつあるダイナミックタイムワーピング(DTW)に基づく類似検索法を高速化する手法を提案している.こうした分野では、時系列データを比較してその類似性を評価することが必要になる.従来はユークリッド距離を用いてきたが、それでは長さの異なるデータを比較することが難しく、異常値に対する堅牢性が低かった.それに対して近年は柔軟にデータを比較できるために、DTWが利用されてきたが、計算量が大きいことがまだ問題であった.本論文では、DTW距離を近似する距離関数、及びその関数を用いた索引手法と探索手法を提案している.実験により従来方式にくらべ大きな性能の改善を示しており、論文賞の推薦に値する.

櫻井 保志君  1991年同志社大学工学部電気工学科卒業.同年日本電信電話(株)入社.1996年奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科博士前期課程修了.1999年同大学院博士後期課程修了.工学博士.現在,NTTサイバースペース研究所に所属.2004年から2005年カーネギーメロン大学客員研究員.索引技術,ストリーム処理技術に関する研究に従事.

吉川 正俊君  名古屋大学情報連携基盤センター教授.1980年京都大学工学部情報工学科卒業.1985年京都大学大学院工学研究科情報工学専攻博士後期課程修了.工学博士.京都産業大学講師,助教授,奈良先端科学技術大学院大学助教授を経て2002年より現職.XMLデータベース,多次元データ索引などの研究に従事.The VLDBJournalおよびInformation Systems編集委員.