「Threshold Ring Signature Scheme Based on the Curve」(Vol.44,No.8)

平成15年度論文賞受賞者の紹介

「Threshold Ring Signature Scheme Based on the Curve」(Vol.44,No.8)

[論文概要]
 リング署名は,グループのあるメンバが文書に署名したことを保証するが,どのメンバが署名したかはわからないという性質をもつ.この性質は,情報発信者が身元を隠す必要がある内部告発文書などに利用できる.従来のリング署名には,署名者の人数に対して署名の計算量とデータ量が指数関数的に増加するという問題があった.この問題を解決するために,この論文では,グループ内の非署名者の人数より1大きい値を次数とする曲線を利用することにより,署名者の人数に対して署名の計算量とデータ量を大幅に削減したリング署名を提案した.

[推薦理由]
 本論文は署名者の匿名性を満たしたディジタル署名方式であるリング署名の新しいプロトコルを提案している.提案方式は,多項式の次数を制約条件とする画期的なアイデアに基づいており,任意に定められるしきい値以上の複数人の署名者の同意の元,署名者を匿名にしたままでのディジタル署名を可能にする.多項式の次数に着目した発想は卓越しており,十分な新規性がある.方式の新規性だけではなく,提案方式は署名長,すなわち,通信におけるコストと検証における計算量のコストの両方において,既存のしきい値付のリング署名プロトコルの中でも著しく優れた性質を実現しており,実用性が高い.よって,本学会の論文賞として相応しい優れた成果である.

桑門 秀典君  1990年神戸大学工学部電気工学科卒業,1992年同大学大学院工学研究科修士課程電気工学専攻修了.1992年日本電信電話株式会社入社.1996-2002年神戸大学工学部助手,2002年より神戸大学工学部助教授.暗号理論,情報セキュリティなどの研究に従事.情報処理学会,IEEE, 電子情報通信学会各会員.博士(工学).

田中 初一君  1964年神戸大学卒業,1966年同大学大学院修士課程修了,1969年大阪大学大学院博士課程修了,工学博士.大阪府立大学工学部助手,神戸大学工学部助教授を経て,1988年より神戸大学工学部教授.1980-1981年トロント大学客員研究 員.情報理論,符号理論,暗号と情報セキュリティなどの研究に従事.IEEE Fellow,電子情報通信学会フェロー.