「メディア空間による分散勤務者のコミュニケーション支援システム「e-office」」(Vol.43,No.8)

平成14年度論文賞受賞者の紹介

「メディア空間による分散勤務者のコミュニケーション支援システム「e-office」」(Vol.43,No.8)

[論文概要]
 分散オフィス環境において組織経営を支援できる実用的なメディア空間システムを実現するため,高圧縮率・在席検出・プライバシ保護効果を目的とした人物領域抽出機構内蔵コーデック,サーバ信号処理による多地点映像伝送制御,Threat of Surveillance問題の解決を目指したReciprocityメカニズム,さらに固定型オフィスメタファと職制準拠管理権限に基づくユーザインタフェースを実装したシステムを開発した.評価実験では目標とした効果を確認しただけではなく,メディア空間とメッセージ通信との統合による新たなアプリケーション領域の可能性を見いだした.

[推薦理由]
 本論文は、メディア空間で仮想オフィス環境を提供し遠隔地のユーザー間のコミュニケーションを支援し、遠隔勤務者の疎外感,孤立感などの解決を目指したシステム「e-office」に関するものである.仮想的な部署の全員の勤務状況映像を用いたオフィスのメタファと各人の勤務状況映像のそばに分散表示するメッセージング機能に特徴がある.運用実験からのメッセージログの分析により、分散勤務者間においては強いインフォーマルコミュニケーションの要求があること,それは電話やEメールでの伝達が困難な内容であることを発見し,e-officeシステムがその伝達に適していることを確認している.メディア空間とメッセージ通信システムとの統合による新たなアプリケーション領域を開拓し読者に大変有益な知見を提供しており論文賞に値する.

榊原 憲君  1961年生.1984年東京工業大学卒業.同年キヤノン(株)に入社.以来,マルチメディア通信に関する企画・研究・開発に従事.映像通信システム全般,CSCW,未来オフィスシステム等に興味を持つ.現在同社iB開発センターに所属.電子情報通信学会,日本テレワーク学会各会員.

加藤 政美君  1962年生.1985年慶應義塾大学理工学部電気工学科卒業.1987年同大大学院理工学研究科電気工学専攻修士課程修了.同年キヤノン(株)入社.G4ファクシミリ,カラーファクシミリ,映像グループウェア等の開発に従事.画像処理,並列処理等に興味を持つ.現在,同社中央研究所にて画像認識システムの開発に従事.電子情報通信学会会員.

田處 善久君  1985年九州大学工学部情報工学科卒業,1987年同大大学院工学研究科情報工学専攻修士課程修了.同年キヤノン株式会社入社.カラーファクシミリ・映像グループウェアの開発を経て,現在同社iB開発センターに所属し,マルチメディア通信技術の開発に従事.

宮崎 貴識君  1996年中央大学理工学部物理学科卒業.1998年同大大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了.在学中ニューラルネットワークを用いた流体の制御に関する研究に従事.同年キヤノン株式会社入社.映像グループウェア及びインターネットサービスの開発に従事.現在,同社iB開発センターに所属.