「表題に基づく統計データの自動可視化手法」(Vol.43,No.1)

平成14年度論文賞受賞者の紹介

「表題に基づく統計データの自動可視化手法」(Vol.43,No.1)

[論文概要]
 自然言語で表された表題に基づいて大量の統計データを自動的に集約し,適切なグラフを用いて可視化する手法を提案する.提案手法では,ユーザから与えられた表題を「何を描画するか」と「何を主張したいか」の二つの観点の下でいて解釈し,意味フレームとして表現する.この意味フレームに基づいて,統計データからユーザが必要かつ適切と考える範囲と詳細度を持ったデータテーブルを作成し,機械学習により構築したグラフ種判別知識を用いてグラフ化する.この一連の処理によって,ユーザはグラフの描画に必要なパラメータを意識する事無く,効果的に要求を満たすグラフを得る事ができる.

[推薦理由]
 本論文は,自然言語で記述された表題を意味フレームと呼ばれる表現形式に変換することで,統計データを適切な種類のグラフで自動描画する手法を提案している.ユーザが自然言語で入力した表題から,ユーザの意図を抽出し,グラフ描画に必要なデータの収集,機械学習を用いた適切なグラフ種の選別などを行ない,グラフ作成プロセス全体を自動化する手法は,新規性が高いばかりでなく,有用性も高い.論文としても適切な構成で読みやすいものとなっており,論文賞に推薦する.

松下 光範君  1993 年大阪大学工学部精密工学科卒業.1995 年大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻制御工学分野博士前期課程修了.同年,日本電信電話 (株) 入社,現在に至る.情報可視化,自然言語理解に関する研究に従事. 1996 年度人工知能学会全国大会優秀論文賞,2001 年度人工知能学会全国大会ベストプレゼンテーション賞各受賞.博士 (工学).

米澤 勇人君  1997 年大阪府立大学大学院工学研究科電気・情報系専攻情報工学分野博士前期課程修了.同年 4 月日本電信電話(株)入社.コミュニケーション科学研究所を経て 2000 年 4 月より西日本電信電話(株)に勤務.現在に至る.情報可視化に関する研究に従事.

加藤 恒昭君  1981 年東京工業大学工学部電気電子工学科卒業,1983 年東京工業大学大学院総合理工学研究科電子システム専攻修士課程修了.同年,日本電信電話公社(現 NTT)に入社.2000 年より,東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻助教授,現在に至る.自然言語理解,対話処理,マルチモーダルコミュニケーションに関する研究に従事.工学博士.