「デバイスドライバとデバイスの一体設計手法へのSpecCの適用性評価」(Vol.43,No.5)

平成14年度論文賞受賞者の紹介

「デバイスドライバとデバイスの一体設計手法へのSpecCの適用性評価」(Vol.43,No.5)

[論文概要]
 我々は,組込みシステムのデバイスドライバ開発の効率化を目的とした,デバイスドライバとデバイスの一体設計手法について研究を進めている.本論文では,システムレベル言語であるSpecCの本設計手法への適用性を評価した.具体的には,SIOシステムを例として,SpecCによる記述を行い,デバイスドライバとデバイスの一体記述が可能であることを確認した.また,SIOシステムのSpecC記述からデバイスドライバ,デバイス,およびその間のインタフェースへの変換を手作業で行い,提示した記述指針に従えばSpecC記述から実装記述への機械的生成が可能であることを確認した.

[推薦理由]
 組込みシステム開発は情報通信産業における最も重要な分野の1つとなってきている。近年、組込みシステムの大規模化・複雑化に伴い、開発コストや品質・信頼性が大きな問題となっている。著者らは、システムLSI設計の分野で研究の進んでいる上位設計技術を適用し、デバイスドライバとデバイスを一体として記述して、そこから両者を機械的に自動生成することで、インタフェース部分でのバグ発生を抑えるとともに、ハードウエアとソフトウエアの分担を柔軟に変更しやすくすることを目指している。本論文の成果はそのアプローチが現実的に可能であることを示したという点で、今後の組込みシステム設計技術の進歩につながる重要な成果であると考えられる。

本田 晋也君  2002年豊橋技術科学大学大学院情報工学専攻修士課程終了.現在,同大学院電子・情報工学専攻に在学.リアルタイムOS,ソフトウェア・ハードウェアコデザインの研究に従事,修士(工学).

高田 広章君 名古屋大学大学院情報科学研究科情報システム学専攻教授.1988年東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻修士課程修了.同学科助手,豊橋技術科学大学助教授などを経て,2003年4月より現職.リアルタイムOS,リアルタイムスケジューリング理論,組込みシステム開発技術などの研究に従事.ITRON 仕様の標準化活動に中心的メンバとして参加.博士(理学).