「健常歩行者センサデータを用いたバリア検出の基礎検討」

2018年度論文賞受賞者の紹介

健常歩行者センサデータを用いたバリア検出の基礎検討

[情報処理学会論文誌 Vol.59 No.1, pp.22-32]
[論文概要]

 屋内外には段差などのバリアが多数存在し,障害者の円滑な移動を妨げている.バリア位置を特定する既存研究は精度と網羅性のトレードオフの問題を抱えている.本論文では,広域のバリア情報を高精度に収集するために,健常者歩行時のセンサデータから障害者に対するバリアの存在を推定する方式を提案している.歩行時に生じる加速度データを用いたバリア推定の検証実験では,他者の歩行データから構築した推定器を用いて一定精度でバリア推定を行える可能性を示し,Deep Learning(Denoising Autoencoder)はバリア推定タスクにも有効であることを明らかにしている.

[推薦理由]

 障がい者に対するバリアの存在を健常者歩行時のデータから推定する本研究のアプローチはユニークであり、新規性が高い。本論文では、健常者歩行時のセンサデータからバリアの存在と種類を推定する機械学習方式を示しており、検証実験によって、他者の歩行データから構築した推定器を用いて一定精度でバリアの推定を行える可能性を示した。現在社会問題の解決にとって重要なテーマを取り扱っており、障がい者の円滑な移動の実現に向けて、今後の発展も期待できる。以上から、論文賞に相応しい優れた論文として推薦する。

宮田 章裕 君

 2005年慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了.同年日本電信電話株式会社入社.2008年慶應義塾大学大学院理工学研究科博士課程修了.2016年より日本大学文理学部情報科学科准教授.インタラクション,実世界指向インタフェース,バリアフリーの研究に従事.ACM,日本VR学会,HI学会,日本DB学会各会員,本会シニア会員.博士(工学)

荒木 伊織 君

 2018年日本大学文理学部情報科学科卒業.同年株式会社ティエム2入社.在学中はインタラクション,バリアフリーの研究に従事.

王 統順 君

 2018年日本大学文理学部情報科学科卒業.同年ARアドバンストテクノロジ株式会社入社.在学中はインタラクション,バリアフリーの研究に従事.

鈴木 天詩 君

 2018年日本大学文理学部情報科学科卒業.同年SOMPOケア株式会社入社.在学中はインタラクション,バリアフリーの研究に従事.