「世界最大級のモバイルISPシステムを実現したOMCSの超並列システムモデル」

2013年度論文賞受賞者の紹介

世界最大級のモバイルISPシステムを実現したOMCSの超並列システムモデル

[情報処理学会論文誌 コンシューマ・デバイス&システム Vol.3 No.1 pp.21-33]
[論文概要]

 NTTドコモのiモードシステムに代表される大規模ISP(Internet Service Provider)システム実現のため,サーバ当たり10000スレッド稼働を目指し,ミドルウェア開発・OSのネック解消のためのOS改造を実施.また大規模ISPシステムを3層に分解,個々の層を10000スレッド稼動のサーバ群で構成し,かつ,サーバ群に負荷を分散させる仕組みを導入,さらに,メールボックスのファイルシステムを高速化し,大規模ISPを構築するためのシステムモデルを確立した.この実現には新たな概念によるシステム構築技法であるOMCSを活用した.

[推薦理由]

 オープン製品群を用いて、ミッションクリティカル性を有して超並列処理を実現するシステム開発技法(OMCS: Open Mission Critical System)を提案するとともに、大規模、かつ超並列処理が必要なシステムとして、iモード(NTTドコモ)を実現するISP(Internet Service Provider)システム開発におけるファイルやOS等の工夫を含む開発全般を報告している。評価では10000スレッド/サーバの世界最大級の超並列性の性能向上を、実用レベルで達成している事に言及している。世界的に評価の高い日本発モバイルサービス開発に実績のあるシステム構築法OMCSに関する本論文は、学術的だけなく、産業的にも極めて重要な成果報告であるため、論文賞に強く推薦する。

相澤正俊 君

 1971年東北大学大学院工学研究科電気通信工学専攻修士課程修了,1972年日本電気株式会社入社.主に基本ソフト(OS)開発とITソリューション・社会インフラ事業を担当.2008年代表取締役執行役員副社長,2011年株式会社国際社会経済研究所(NECグループ会社)理事長,2013年より(株)MCシステム研究所代表.博士(情報科学・東北大).

東健二 君

 1985年関西大学大学院工学研究科電子工学特論博士課程前期修了し,同年日本電気株式会社に入社.OSI通信系ソフト開発やUNIX系OS開発を担当後,オープン系大規模分散システム開発に従事.2010年 OMCS事業本部長,2013年  SIサービス統括ユニット理事に就任.

大藤豊喜 君

 1968年高知工業高校卒業.同年4月,日本電気株式会社に入社.日本電気にて各種のOS,ミドルウェアの設計・開発,大規模システムのインフラのアーキテクチャ設計・構築などに従事.

川浦立志 君

 1983年東北大学大学院理学研究科数学専攻修士課程を修了し,日本電気株式会社に入社.主にメインフレーム,ストレージの基本ソフト開発と組込みソフト事業を含むITソリューション事業を担当.