2021年05月17日版:渡辺 尚(監事)

  • 2021年05月17日版

    「新しい時代を造る情報処理学会への期待

    渡辺 尚(監事)


     私は、2019年度、2020年度の監事を務めさせていただきました。研究会では、情報環境領域のMBL(モバイルコンピューティングに関する研究会)を中心に活動してきました。したがって、研究会活動がより活発になることを念頭において監事を務めさせていただきました。この経験を基にお話させていただきます。

     監事は、学会のコンプライアンスを確認する重要な役職です。学会全体はもとより、国際会議や受託事業の会計を確認します。より詳細に言えば、学会全体の法律上の監査は会計法人の方がされ、監事はより各事業や活動の実態に沿って正しく会計処理が行われていることをチェックしています。たとえば、国際会議については、研究会のメンバ、すなわち大学の先生や企業の方がされた活動の会計処理が正しくなされているかをチェックします。

     任期の2年目である2020年度は、情報処理学会にとって普段以上に多くの出来事がありました。前年度末に始まった新型コロナ禍の中、3月の全国大会を急遽オンライン開催し、4月には60周年を迎えました。盤石の基盤を築いてきた先人達の努力とともにこの難局を乗り越えてこられた会長始め理事の方々のご尽力に深く敬意を表します。その上で、監事としていくつかの点を指摘させていただきました。

     まず、論文誌のインパクトファクタです。本会の学術活動の基盤は論文誌にあります。その良し悪しは議論のあるところではありますが、博士後期課程学生の博士学位取得条件、日本学術振興会の特別研究員制度採択基準、博士学位取得後の教員等人事評価にも、インパクトファクタは本格的に使われつつあり、ジャーナルの存在意義に直結しつつあります。インパクトファクタ取得に向け着々と進んでいるとのこと、ぜひ期待したいと思います。

     また、ここ数年、 AI、ビッグデータ等の基礎技術、Society 5.0の応用など情報処理分野が注目されてきました。2020年は、新型コロナでリモートワーク等ますます情報処理システムの重要性が認識されています。2020年度情報処理学会は会長始め理事の皆様方のご尽力により、中長期計画の本格始動、そして委員会再編等新たな試みがなされています。これらは学会の発展にとってきわめて重要な施策と捉えられます。ジュニア会員制度に加えて、大学入試への教科「情報」の導入、中高生情報学プロジェクト等は将来への先行投資であり、社会的にも有意義なものと考えます。特に、2015年度から制度化されたジュニア会員制度は長期的な会員の獲得という経営的観点のみならず、日本だけでなく世界的にも情報分野が社会に貢献するための基盤を作っていると言えます。私の知人の中学生の息子さんはこの制度を知るとすぐに入会し、「先生質問です」のコーナーを毎回楽しみしているとのことです。将来を担う若い彼らの役に立っていることを実感できるのは大変うれしいことです。

     さらに、分野横断的な新たな研究会発足による新分野への挑戦、IFIPで承認を受けたCITP等IT人材育成など多くの新たなチャレンジがなされています。新しいチャレンジに加え、今後も広報活動広聴活動等により本会の活動が社会的に広く認知され、学会としての存在意義が高まることを期待しています。