2021年08月02日版:上原 忠弘(財務担当理事)

  • 2021年08月02日版

    「学会DXへの取り組み

    上原 忠弘(財務担当理事)


     昨年度、財務担当理事に就任してから1年が経過しました。就任以前は自分の専門の研究会や全国大会などのイベントしか認識できていない状態でしたが、財務担当理事として学会を財務の視点から俯瞰してみることができ全体像を把握できた、私にとってとても有意義な1年でした。2年目となる今年度はアウトプットの年として学会に貢献していきたいと思っています。

     さて、実は財務担当理事は情報システム委員会の委員長も兼務しています。本会の情報システムの面倒を見る役割であり、本メッセージではその視点からお話しさせてもらおうと思います。

     「2025年の崖」というキャッチ—なフレーズのもとDXの必要性が叫ばれていた中、コロナ禍によるある意味強制的な推進力が生まれたことで、企業のみならず世の中全体でディジタル化への流れが加速しています。学会も、昨年3月の全国大会をいち早くオンライン開催に踏み切ったり、事務局業務をリモートワーク化したりするなど、ディジタル化を進めてきました。この流れを強化するとともに、日本を代表する情報システム系学会としてDXに取り組みその経験を社会に還元すべく、2021年度は学会DXの推進にフォーカスを当てていきます。以下、2021年度事業計画の内容です。

    ・従前より行っていた学会情報システムの見直しに加え、事務局業務のBCP/DX化を推進するため、情報システム委員会を情報システム・DX委員会と改名し、ニューノーマル時代に対応したディジタル化を推進します。
    1. 情報システム委員会を、これまでの学会情報システムの検討に加え、学会業務のニューノーマル対応ならびにDXを推進する「情報システム・DX委員会」と改名します。
    2. 情報システム・DX委員会で立案するDX戦略を具体的な活動に落とし込み、基幹システムのクラウド化や財務システムの電子化などを推進するCDO(チーフ・ディジタル・オフィサー)を採用します。
    3. 支部Webサイトのシステム統合について、2020年度に先行実施した九州支部での実績をベースに、残り支部のシステム移行を実施します。
    4. 学会Webサイトやメールサーバなどの本部情報システムについて、クラウド移行やCMSの刷新など、学会のDX活動と連動した改善項目を抽出・精査し、2022年度以降のシステム更改実施に向けた方針を作成します。

     ご承知のとおり、DXは情報システムだけの問題ではなく事業そのものの変革です。学会サービスの変革、新サービスの創出などと連動して情報システムを柔軟に対応させていく必要がありますので、学会の各事業担当理事や、樋口理事のメッセージで言及されていた学会の中期計画と連携しながら進めていきたいと思います。

     最後に、この1年で感じたことについて触れたいと思います。それはバーチャルとリアルのバランスについてです。コロナ禍でリモートワークが進んだり、さまざまなサービスがオンライン化されたり、従来できないと思われていたものが意外とできる、便利、ということに気づけた1年だったと思います。一方で、雑談や同じ空間を共有する機会の減少で、セレンディピティが起こりにくくなる、先輩の背中を見て学ぶ機会がないなど、なにげない日常の中で空間をリアルに共有することで生まれる「大事なもの」が失われています。これについては多くの人が課題と感じているのではないかと思います。ITの技術者としてはその「大事なもの」をITでいかにとらえて蓄積・共有していくかも面白いテーマだと思いますが、すべてをIT化するのではなく、オンライン/オフラインのバランスをうまくとるための技術・ノウハウも重要なのではないかと考えています。こういった観点も、会議のハイブリッド開催のやり方など、学会サービスのDX化のなかで考えてきたいと思っています。