2020年12月07日版:下條 真司(論文誌担当理事)

  • 2020年12月07日版

    「論文誌から見るコロナ後の学会の進む道
    下條 真司(論文誌担当理事)

     論文担当の理事として、はや1年半となり、残る任期も半年足らずとなりました。正直、やっと業務の全体像が分かってきた感じです。特に今年は皆さんと同様コロナ禍の対応に追われる1年はあっという間に過ぎた感じです。

     学会業務も編集委員会や理事会などすべての会合がオンラインとなり、効率は良いのですが、カジュアルなおしゃべりやお互いのアイコンタクトがなく、圧倒的に発言数は減っているような気がします。そんな中でも編集委員長や編集委員会委員の弛まぬ努力により、着実に質の高い論文を発行し続けてることには、感謝です。

     さて、論文誌に関係した最大の懸案は、英文誌であるJIPのインパクトファクター取得です。これは、本会では、英文のトランザクションをJIP1つに集約し、長年多くの方々が努力してきたにもかかわらずまだ達成されておりません。

     そもそもインパクトファクターが我が国で話題になっているのも主に大学において国際化が重要なミッションとなり、競争的資金獲得や教員の評価、採用に当たって重要視されているからにほかなりません。

     JIPも著名な分析機関の1つであるクラリベイト社に申請はしているのですが、まだ、認められてはおりません。申請が認められる基準は、編集方針や安定した出版など体裁もありますが、やはり質の高い国際的に注目される論文が多く集まっていることが何より重要です1)

     ただ、現在世界中で論文誌が競い合って論文を奪い合う傾向もあり、なかなか大変です(皆さんも、聞いたことのない雑誌から、招待論文を依頼されたことがあるのではないでしょうか)。

     なかなか、難しい問題ですが、2つの方向があると思います。短期的にはこれまでやられていたように英文誌の掲載料を無料にする。現在では、英文特集号のうち、認められたものは掲載料を無料にすることができます2)。また、論文のオープンアクセス化を進め、researchgate3)のような新たなメディアによる流通を促進することです。

     もう1つは、遠回りですが、ITプロフェッショナルに向けた学会を目指すことです。ICT業界はAIやDXでとても盛り上がっているのに、当会の会員は減少を続けています。新たに増えてきたITプロフェッショナルを取り込めていないのです。これには、会誌のオンライン化やnoteを利用した発行などさまざまな動きが始まっています。新しい会員、新しい活動が増えることにより、当会の活動が活発になれば、新たな英文論文が増えることに繋がっていくのではと思います。実際、新たなセグメントを取り込んだディジタルプラクティスは掲載数を着実に増やしています。

     インパクトファクター取得は重要ですが、それは学会活動が活発であることの1つの指標にしかすぎないと思うのです。


    1)笠井 咲:Impact Factor取得に向けて-Radiological Physics and Technology-、医学物理、37巻、4号、pp.216-219(2017)、公開日 2018/03/08、Online ISSN 2186-9634、Print ISSN 1345-5354
    https://doi.org/10.11323/jjmp.37.4_216
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjmp/37/4/37_216/_article/-char/ja
    2) 英文特集号の掲載料免除の特例について
    https://www.ipsj.or.jp/journal/proposal/specialissuestemp.html
    3)https://www.researchgate.net/