2016年06月06日版

「学会モデルの変革

前田 章(副会長)

 ITによる社会の変革が加速しています。パソコン、インターネット、モバイルの普及が進み、現在はIoT(Internet of Things)の時代と言われています。いろいろなモノがネットワークに接続され、IT化される時代です。IoT化が進展するにつれて、IT関連の事業構造も変革を迫られています。機器売りのビジネスから、サービス中心のビジネスへ、さらにはITによって顧客の新しい価値を提案し、実現していくイノベーションが事業の中心になろうとしています。

 このような環境下で、産業界のITに対する見方も当然変わっています。オープンイノベーションという考え方はその代表例で、自社技術開発にこだわらず、スピード重視で必要に応じて最適なパートナーシップでイノベーションを実現しようとする考え方です。つまり、企業は自社の競争優位につながるコア技術への研究開発投資に集中し、周辺技術に関しては他社技術を活用するという方向になってきます。

 情報処理学会では、産業界所属の会員減少が続いています。これは、学会の提供する価値が、企業所属の研究者・技術者の期待に応えきれていないことが一因であると考えられます。すなわち、最先端技術に関する情報を提供する、論文や学会発表の機会を与えるといった従来の学会モデルが、オープンイノベーション時代に対応しきれていないのではないか、という議論です。

 この論点は学会の各種委員会で議論を続けていて、1つ見えている方向性は、企業の枠を超えた研究者・技術者のネットワークの場を学会が提供できないかということです。情報処理学会は国内最大のIT研究者・技術者コミュニティであり、このコミュニティ内でのオンライン・オフラインコミュニケーションを活性化することが、学会自身の会員に対する価値提供になるはずだと考えています。

 ITが社会を変革している中、ITに関する学会のモデルも変革を続けていかなければ時代に取り残されます。新しい学会のあり方について、ぜひ会員の皆さんのご意見をよく聞きながら改革を進めていきたいと思います。

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