ソフトウェア開発の実務における最大の課題は要求分析にあることから,(社)情報サービス産業協会では,平成18年度より要求工学WGを設置し,3年間にわたって要求工学の実践的な取り組みを行った.初年度はWG委員が現場で実践したプラクティスを通じ,要求開発プロセスにおける「組織形態パターン」をとりまとめた.2年度はさらに現場でのプラクティスを収集し,要求獲得,要求分析,要求仕様記述,要求検査,要求管理別にベストプラクティスを整理した.最終年度では,要求工学を活用するための知識とその人材育成の指針となる要求工学知識体系(REBOK: Requirements Engineering Body Of Knowledge)[リーボックと呼ぶ]の検討,ならびに,ユーザとベンダが協調した要求開発の実践を目指して,事例の収集,整理を行った.このセッションでは,JISAでの3年間の取り組み成果について紹介するとともに,現場における要求工学の課題について討議する.
講演概要 情報システムとソフトウェア開発の実務における最大の課題は要求定義にある.要求工学は要求定義を体系的に行う技術体系である.しかし,要求工学の実践には様々な技術やスキルが必要であることから,その習得が課題となっている.これに対して,要求工学を実践するための知識を整理,体系化した要求工学知識体系(REBOK: Requirements Engineering Body Of Knowledge)[リーボック]を開発している.REBOKは,要求分析の専門家のみならず,要求にかかわるユーザ,ベンダの技術者,エンドユーザ,経営者,などが必要とする知識を整理,体系化したものである.本講演では,REBOKの全体像を紹介する.さらに,ソフトウェア工学知識体系(SWEBOK)やビジネス分析知識体系(BABOK)との関係なども紹介する.