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最終更新日:2006.11.14

情報系学科 達成度調査結果報告 (2005年)

 

1. 目的

今回の達成度調査は, 情報および情報関連分野の専門学科での教育・学習によって, 卒業生がどのような知識・能力をもつことになるのかに ついて,現状を把握することが目的であった.

そもそも, 4年間の教育・学習によって学生に達成させようとする 内容・水準の設定は,学科・学部・大学が独自に行うものであり, それぞれ異なっていて不思議はない. 特に,情報および情報関連分野は,他分野に比してその広がりが大きく, 代表的な CS (Computer Science),CE (Computer Engineering), IS (Information Systems), SE (Software Engineering) の4領域にとどまらず, 多様な領域を内包しているので,こうした設定には大きな差異がある. その差異を認めたとしても,なお,この分野の学科にあっては 何らかの知識・能力を獲得させるはずの,“共通する”項目について, その達成度がどのようなものになっているかを調べたのである.

達成度を調査する対象項目の選定に当たっては, 日本技術者認定機構 (JABEE) 認定基準 (pdfファイル) を参考とした. 認定基準は,教育プログラム(学科・専修・コースなど)が つぎの(a)-(h)に関して学習・教育の目標を設定するように求めている.

(a)多面的に考える能力・素養
(b)技術者倫理
(c)数学・自然科学・情報技術の知識・応用能力
(d)専門分野の知識・応用能力
(e)デザイン能力
(f)コミュニケーション基礎能力
(g)継続的学習能力
(h)与えられた制約の下で計画的に仕事を進め,まとめる能力

この(d)に関しては,それぞれの専門分野に応じて分野別要件が 認定基準の補則として設けられている. 情報および情報関連分野の分野別要件 http://www.ipsj.or.jp/12kyoiku/acre/criteria-info.html は,つぎのように定めている.

修得すべき知識・能力

教育プログラムの修了生は,つぎに示す知識・能力を身に付けている必要がある.

  1. つぎの学習域すべてにわたる,理論から問題分析・設計までの基礎的な知識およびその応用能力
    • アルゴリズムとデータ構造
    • コンピュータシステムの構成とアーキテクチャ
    • 情報ネットワーク
    • ソフトウェアの設計
    • プログラミング言語の諸概念
  2. プログラミング能力
  3. 離散数学および確率・統計を含めた数学の知識およびその応用能力
  4. 教育プログラムが対象とする領域に固有の知識およびその応用能力

このうち 4 は,そのプログラムが CS, CE, IS, SE などのどの領域を対象としているかに よって変わってくる. したがって,今回は,この分野別要件に示された 1〜3 の項目を主対象として 調査を行った.


2. 実施内容

理工系情報学科協議会 http://kyougikai.meme.hokudai.ac.jp/ に参加している学科を対象として, 2005年7月3日〜7月30日に調査を行った. 各学科には, 説明文・調査票をシートとしてまとめたExcelファイル chosa3.xls   (調査票A, 調査票B, 大・小項目の説明, 達成度区分, 達成度の記述例 以上pdfファイル) を添えた依頼状 chosairai2.doc (pdfファイル) をメールで送付した.

調査対象は,分野別要件を参考に, 8個の大項目(20の小項目)とした. 達成度そのものは, 0〜5の達成度区分 を記入してもらうとともに, その達成度を具体的に文章の形でも記入してもらった.

達成度は,それぞれの学生の学習状況によって変わってくる. 必修科目で学習・教育が行われている項目なら, 学生によらずこれだけは達成していると言う意味での 達成度を示す事ができる.しかし, 選択科目によっている項目に対してはそれを示すのが難しい. そこで,その学科での平均レベルの学生が達成していると思っていい達成度と, 最低レベルの学生でも達成しているはずの達成度とを 別々に答えてもらった.


3. 調査結果

回答があったのは,28学科 であった.寄せられた回答には,書かれた具体的な文章から読み取れる 達成度と,記入された達成度区分とにそごがみられるものがあった. 回答にあった達成度そのものと, 具体的な文章から読み取れる達成度に整理したものとの 二通りの集計結果を示す.

集計結果

“回答”は,回答にあったものの集計を示し, “判定”は,整理後の集計を示す. なお,項目によって回答がなかったものがあった. また,回答された達成度区分が“2〜4”などと幅を持たせた 形になっていたものは“回答”には計上していない.

この集計結果から何がいえるかについての議論はあえてしないでおく. ただ,“2〜4”といった達成度区分の記入があったことからもわかるように, 回答にあたって,達成度を達成度区分で表すことの難しさ, それを具体的に文章で書き下すことの難しさを感じた方が多かったようである. また,設問でいう“平均的学生”をどのように想定すればよいかに 戸惑われた方もあったと思われる. こうした点を改善して,より多くの学科からの回答が得られるようにして 再度調査を行う予定でいる.