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最終更新日:2008年2月12日

 ソフトウェアジャパン2008 ITフォーラムセッション

 
高度IT人材育成 フォーラム
「ソフトウェアプロセス改善と人材育成」

セッション概要
ソフトウェア品質を保証し,ソフトウェア開発リスクを低減するためには,開発組織に適合したソフトウェアプロセスを定義して実践すると同時に,プロセスを継続的に改善するためのPDCAサイクルを構築する必要がある.IPA/SECは,ISO/IEC 15504に基づいたプロセス改善の推進の一環としてソフトウェアプロセスのアセスメントモデルSPEAK IPA版を開発し,平成19年9月に公表した.また,平成19年末にはSPEAK IPA版に基づいたアセッサの教育についてもまとめる予定である.ソフトウェアプロセス改善を進めるためには,プロセスの定義・実践・改善を行える人材の育成はもとより,ソフトウェアプロセスを評価するアセッサの育成が不可欠である.本セッションでは,産業構造審議会 人材育成WGが発表した「高度IT人材の育成をめざして」や,総務省が推進している「情報システム調達に係る政府調達の基本方針」等との関連も含め,ソフトウェアプロセス改善やそれを支えるIT人材育成を推進するための方策について議論を行う.

司会 新谷 勝利 (IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター エンタープライズ系プロジェクト研究員/
           経済産業省 プロセス改善研究部会 副主査)
【略歴】1969年に日本IBMにカストマー教育インストラクターとして入社後,製造業のシステムズ・エンジニアを経て,80年代は金融機関の勘定系システム用のIMS/VS 拡張版Fast Pathの開発を初めとするパッケージ製品の開発に関与.1984年には,NYCに新設されたIBMのソフトウェア・エンジニアリング研究所にて,ハーラン・ミルズのグループが開発したソフトウェア・エンジニアリング教育パッケージの集中教育を受け,インストラクター資格を取得.帰国後,SW開発部門にて数百人への教育を実施するとともに,実際のプロジェクトへの適用の支援.90年代半ばからは,リエンジニアリング・スタッフとして,IPDおよびPMの導入に関与.2004年9月に,新設のソフトウェア・エンジニアリング・センターに研究員として参加し,現在に至る.ソフトウェア・エンジニアリング・センターでは,主としてプロセス改善タスクフォースをリードしている.

プログラム [会場: 6F 602C]
講演(1)

13:15-13:35


「ユーザー企業におけるプロセス改善の取り組み」

 足立 久美 ((株)デンソー 電子技術3部 品質リーダー 主幹(次長格))

講演概要
企業における改善活動は,製品の性能や安全性の向上,コスト低減,付加価値向上等のために実施するプロダクト改善と,製品の作り方や管理方法の変更,ソフトウェア開発の生産性と品質の向上等のために実施するプロセス改善に大きく分けることができる.しかしながら,本業として実施するプロダクト改善に対して,プロセス改善は本業に対して新たに加えられたり,押しつけられて実施させられる活動と認識される傾向にあり,多くの企業でうまくいっていないとか,プロセス改善自体が理解されていないといった声をよく聞く.近年の自動車を例にとってみると,一台の車には数十個のコンピュータが搭載され,膨大なソフトウェアが連携して車を制御している.このように今後さらに進んでいくシステムの大規模かつ複雑化に対応していくためには,プロセス改善活動によって,組織的,計画的,継続的に,車の両輪の如くプロダクト改善に合わせて,ソフトウェア開発の効率化と人材の育成を図っていくことが必要である.プロセス改善も本業であり,事業目標達成の大きな切り札になる.

略歴
1982年に株式会社デンソーに入社以来,自動車用エンジン制御装置の制御ソフトウェアの開発に従事.現在は,所属部署にて品質リーダとしてプロセス改善活動,品質向上活動を推進中.経済産業省/プロセス改善研究部会 委員(WG1),情報処理学会/情報規格調査会/SC7/WG10小委員会オブザーバ,日本規格協会/ソフトウェアの評価技術標準化調査研究委員会WG2委員.

講演(2)

13:35-13:55


「プロセス改善におけるプロセスアセスメントの適用」

  北野 敏明
(IPAソフトウェア・エンジニアリング・センター エンタープライズ系プロジェクト研究員/
         
経済産業省 プロセス改善研究部会 WG1リーダー)

講演概要
プロセス改善とは,“よい”と信じる方向に自分達の仕事のやり方を変えていくことである.具体的には,現在の自分達の仕事のやり方から問題点を抽出し,その解決策を見い出し,実行し,定着させるといった一連のサイクルを実行する.アセスメントは,自分達の仕事のやり方がどの程度の能力があるかを診断するという,いわば自分達の仕事のやり方の健康診断である.そして,健康診断は一度受けてしまえば終わりというものではなく,毎年毎年繰り返し受診することに意味があるように,アセスメントも一度受ければよいものではなく,繰り返し受けることによって仕事のやり方の問題点の発見やプロセス改善の成果を確認することに意味がある.IPA/SECでは,アセスメントを行うためのツールの例としてISO/IEC 15504に適合した「ソフトウェアプロセスの供給者能力判定及びアセスメントキット−IPA版」(SPEAK IPA版)を公表した.SPEAK IPA版をはじめとしたアセスメントモデルを活用したプロセス診断により,日頃自分達でも感じている問題点を再確認できるとともに,新たな問題点の気づきを与えてくれる有効な手段になり得る.監査・審査とアセスメントの違いを踏まえ,アセスメントが形式的なものにならないようプロセス改善活動に適用することが改善の成否を握る重要な鍵である.

略歴
新日鉄ソリューションズ入社以降,ソフトウェアの見積り,開発方法論などソフトウェアエンジニアリングに関する調査・研究とプロジェクト展開に従事.品質保証,ISO9001認証取得支援活動を経て,2002年よりプロセス改善に従事し,ISO/IEC 15504適合アセスメントモデルSPEAKを開発,社内へ展開中.独立行政法人 情報処理推進機構ソフトウェアエンジニアリングセンター 研究員,情報処理学会/情報規格調査会/SC7/WG10委員,日本規格協会/ソフトウェアの評価技術標準化調査研究委員会 WG2委員.
講演(3)

13:55-14:15


「プロセス改善における人材育成の重要性」

 掛下 哲郎 (佐賀大学 理工学部 知能情報システム学科 准教授)

講演概要
情報専門教育を行っている大学ではJABEEによるアクレディテーション認定の取得が進んでおり,2001〜2006年度の間に28プログラムが認定を得た.JABEE認定は企業等におけるISO 9001(品質保証システム)の認証取得に対応するものであり,高等教育におけるプロセス改善と考えることもできる.本講演では,大学における教育システムの構築および認定の取得,JABEEにおけるアクレディテーション審査および審査ルールの策定といった各種の経験を踏まえ,ソフトウェアプロセス改善およびそのアセスメントについてコメントする.プロセス改善を実質的なものにするためには,システム開発を行うIT技術者の育成およびアセスメントを行う人材の育成が重要である.

略歴
九州大学情報工学科卒業.同博士後期課程修了.工学博士.現在,佐賀大学知能情報システム学科准教授.2001年度より学科の教育システムの構築を推進し,2003年度にJABEE認定を受けた.2004年度より情報処理学会アクレディテーション委員会幹事およびJABEE基準委員.2007年度に高度IT人材育成フォーラムを立ち上げ,IT人材育成における産学連携活動を推進中.データベースおよびソフトウェア工学を専門とする.情報処理学会,電子情報通信学会等会員.
パネル討論

14:15-15:15


「日本におけるプロセス改善の普及と人材育成の課題」


討論概要
足立氏には,「ユーザー企業におけるプロセス改善の取り組み」と題して,同氏が体験されてきていること,この取り組みには,結局個々人の意識改革が必要であることを認識された上で実施されている人材育成教育の経験を講演していただきました.北野氏には,所属されている企業グループ内での広範なアセスメントおよびそれを通したプロセス改善の体験,その過程で完成されたSPEAKというアセスメントモデルと手法の開発,特定の企業グループを超えてそれを活用するためにSPEAK IPA版を開発し,実証実験を担当しておられる経験を話していただきました.掛下先生には,立場ががらっと変わって,大学教育という場で,プロセス改善の考え方がどのように適用できるか,されているかについてコメントしていただきました.小浜氏は,SPEAK IPA版の実証実験の被験社にて,被験社がわのコーディネーションを担当しておられます.当パネルにおいては,以上のような様々な立場からのプロセス改善の実践というものが,立場を超えて共通なもの,その考え方,アプローチ等への「気づき」がオーディエンスの皆様に得られたものと考えます.「プロセス」には「活動」があります.「活動」は「人」がするものです.よって,この「人」が「プロセス」およびその「改善」に占める割合が高いことを認識し,如何に育成してゆくかは,プロセス改善の成果そのものに直結します.このあたりが課題と共に明らかにされます.
司会:新谷 勝利(IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター エンタープライズ系プロジェクト研究員)
写真・略歴は上記司会参照
パネリスト:足立 久美((株)デンソー 電子技術3部 品質リーダー 主幹(次長格))
写真・略歴は上記講演(1)参照
パネリスト:小浜 耕己(住生コンピュータサービス(株)品質保証部 統括マネジャー)
略歴 住友生命保険(相)で,情報システムの開発とプロジェクト管理に従事.住生コンピューターサービス株式会社に出向後,標準化,品質マネージメントシステム,SE・PM育成を担当.SE研修,PM研修の企画・実施・外販に携わる.現職は全社PMOチームのリーダー.「日経SYSTEMS」誌に「図解でもっと磨くプロマネ技術」を  連載中.
パネリスト:掛下 哲郎(佐賀大学 理工学部 知能情報システム学科 准教授)
写真・略歴は上記講演(3)参照
パネリスト:北野 敏明(IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター エンタープライズ系プロジェクト研究員 )
写真・略歴は上記講演(2)参照