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最終更新日:2007年1月24日

 ソフトウェアジャパン2007 ITフォーラムセッション

 
福祉情報システムフォーラム
「ハートウェア・ジャパン!? −情報のユニバーサルデザインを考える」

本セッションの情報保障について
◇視覚に障碍のある方
 ・講演原稿の一部が,このページから電子的にダウンロードいただけます(テキストファイルもご用意しています).
 ・弱視の方は,802.11b/g 対応のノートパソコンをお持ちであれば,お手元まで講演画面をお送りできます.お手持ちの画面拡大ソフトとも併用できます.
  (会場に 20 分ほど前にいらして,申し出てください)
◇聴覚に障碍のある方
 ・手話通訳および要約筆記による情報保障があります.

セッション概要

ユニバーサルデザインを,参加者とともに多面的に考える.はじめに,招待講演者として関根千佳氏をお招きし,「ユビキタス情報社会におけるユニバーサルデザイン」とはなにかを探求する.ユニバーサルデザインの基本コンポーネントであるアクセシビリティとユーザビリティ,および人間中心設計の考え方をとりあげ,開発者や組織ができること,なすべきことはなにかを明らかにする.また,「協調によるユビキタスなユニバーサルデザインの実現」として,ユーザとともに考える姿勢を基本としつつ,これからの情報システムは,家電は,人々はどう協調すべきかという問題を提起する.さらに,現場の要約筆記者や聴講者とともに講義・講演の情報保障環境を創りあげてきたPC要約筆記ツールIPtalkとその発展過程を題材に,「協調の場作りとツールの協創」を考える.


司会 笠原 照明((株)ソリトンシステムズ 山形開発センター 所長)
【略歴】1975年鶴岡高専卒業後〜80年まで東北大学電気通信研究所技官,音声・音響の研究をお手伝い.この時の発話障害に関する研究のお手伝いが福祉機器の開発にかかわった最初.その後,研究者のための実験装置やソフトの開発のお手伝いを続け,1983年アステック(株) を設立,2001年に山形大学大学院工学研究科修士課程修了.現在,山形福祉デザイン研究会.企業内ジョブコーチ研究会.福祉情報システムフォーラムでお手伝い中.

プログラム  [会場 2F蓬莱]
13:15-13:45

招待講演 招待講演「ユビキタス&ユニバーサルな日本を目指して」
関根 千佳 ((株)ユーディット 代表取締役)

【講演概要】2015年の世界は誰にも予測できないが,2つだけ確実なことがある.ITがわれわれの生活のすみずみに行き渡ることと,私や家族が10歳確実に歳をとっているということだ.21世紀を生きるうえで,また企業の製品開発のあり方を考える上で,誰もが使えるというユニバーサルデザインの概念と,ユビキタス情報技術との融合が重要になってくる.ユニバーサルデザインとは,年令,性別,能力,環境などにかかわらず,できるだけ多くの方に使えるよう最初から考慮して,デザインを行うプロセスを指す.ユニバーサルデザインの基本的な要素は,アクセシビリティ(誰にでも使えること)とユーザビリティ(使いやすいこと)である.ITのアクセシビリティに関しては,海外では守らなければ公共調達の対象にできない国も多く,日本でもPCや通信機器,WebコンテンツなどがJIS規格として設計や調達の指針となっている.ユーザビリティに対しては,ユーザー評価を始め,人間中心設計の多彩な手法がある.ともに人間の多様性や尊厳に対する理解が不可欠であり,ユビキタス情報社会の基礎となるべき概念である.

【略歴】株式会社ユーディット(情報のユニバーサルデザイン研究所)代表取締役.アクセシブルなWeb構築やIT機器デザインのコンサルタント.総務省情報通信審議会,国土交通省国土審議会計画部会,経済産業省日本工業標準調査会を始め,各省庁や自治体のITやユニバーサルデザインに関する委員を歴任.美作大学客員教授,・金沢大学・東京女子大学・東海大学等の非常勤講師.主な著書に岩波書店『「誰でも社会」へ』,地湧社「スローなユビキタスライフ」,NTT出版「みんなの命を救う 災害と情報アクセシビリティ」(共著)等. http://www.udit.jp/
13:50-14:10 講演1「協調によるユビキタスなユニバーサルデザインの実現」
秡川 友宏 (静岡大学情報学部 助手)

【講演資料(PDF版),(テキスト版)】
【講演概要】
2015年の機器や家電は,ユニバーサルデザインになっているだろうか.すべての機器や家電に音声応答がつき,目が見えなくても自販機で好きな飲み物が買えるようになるだろうか.オーブンレンジにも点字ディスプレイがつき,盲ろう者もさまざまな調理メニューを使いこなせるようになるだろうか.
真のUD社会の実現のためには,協調が不可欠である.1つめは,情報システムどうしの協調.音声 (あるいは点字) つきのテンキー端末を持ち歩いて,自販機やオーブンをはじめ世の中のさまざまな機器と連携させるのが,現実的なUD化への近道である.2つめは,人と人との協調.情報保障の担い手と受け手が歩み寄り,70点の情報保障を規格化し広範囲に実施する.足りない点を補うために自分専用の端末を持ち歩いてもらうというのは,このモデルのひとつである.3つ目は,人々と情報システムの協調.情報技術は,さまざまなレベルの担い手と受け手の仲立ちができるように活用できなければならない.ユビキタスなUDの実現のために,UDにかかわるすべての人と現実的な落としどころを探りたい.

【略歴】 筑波大学自然学類卒業.学部在学中に福祉機器に関心をもち,情報学部生に紛れてハードウェアやアルゴリズムを学ぶ.大学院より情報分野に転身.2000年同大大学院工学研究科修了.同年静岡大学情報学部着任.現在まで助手.情処学会福祉情報システムフォーラム世話人,信学会福祉情報工学研究会専門委員,映メ学会コンシューマエレクトロニクス研究会幹事.IEEE CE Japan Chapter若手論文賞 (’01,’01,’03,’03,’04),IEEE Intl. Conf. on Consumer Elec. Outstanding Paper Award (’05 Poster Award).
14:15-14:35

講演2「PC要約筆記ツールIPtalk − 協調の場作りとツールの協創」
栗田 茂明 (パソコン要約筆記サークル「ラルゴ」 会長)

【講演資料(PDF版),(テキスト版)】
【講演概要】
聴覚障害者に対する情報保障の一つである「パソコン要約筆記」は,近年,情報保障としての市民権を得,全国各地で行われるようになった.種々の問題はあるものの,技術的・運用的な試行錯誤の時期は終わり,本格的な普及の時期に入りつつあると考える.しかし,いくつか課題も出て来ている.特に「入力者の不足」は,パソコン要約筆記が情報保障として次のステップに進むことを妨げていると感じる.「インターネットを使い在宅で入力する」(在宅入力情報保障)という解決方法を従来から多くの方が提案しているが,入力者の大多数を占めるボランティアサークルが情報保障として,この方法を取るには到っていない.そこで,「ラルゴ」は,2005年から,この「在宅入力情報保障」を取り上げ,「一般のボランティアサークルでもできる方法」の検討・実証実験を愛媛大学村田研究室の協力を得て行っている.この活動やIPtalkの機能追加における,要約筆記者,聴講者,研究者のかかわりを例に,「協調の場作りとツールの協創」について考えてみたいと思う.
【略歴】1998年の第34回全国身体障害者スポーツ大会「かながわ・ゆめ大会」のパソコン要約筆記ボランティアを中心にパソコン要約筆記サークル「ラルゴ」を設立し,会長となる.1999年「ラルゴ」の練習用ソフトとしてIPtalkを作成.2000年全難聴主催の第2回全国パソコン要約筆記指導者養成講座で説明したことがきっかけとなり全国でIPtalkが使われるようになる.その後,全国から寄せられる機能追加の要望でバージョンアップを続けている.
2002年財団法人日本ITU協会から日本ITU協会賞ユニバーサルアクセシビリティー賞を受賞.
2005年財団法人青鳥会からヘレン・ケラー賞(障害者教育研究・実践補助賞)を受賞.
14:40-15:15

自由討論 

司   会:笠原 照明((株) ソリトンシステムズ 山形開発センター )
写真,略歴は,司会 参照
パネリスト:関根 千佳((株)ユーディット)
写真,略歴は,招待講演 参照
パネリスト:秡川 友宏(静岡大学情報学部)
写真,略歴は,講演1 参照
パネリスト:栗田 茂明 (パソコン要約筆記サークル「ラルゴ」 会長)
写真,略歴は,講演2 参照
パネリスト:織田 修平(NTTサイバースペース研究所)
【略歴】生来の聴覚障害者.1997年福岡大学理学部応用数学科卒業.同年日本電信電話株式会社入社.画像通信,バーチャルリアリティにおける聴覚障害者のコミュニケーション支援の研究開発などを経て,現在,NTTサイバースペース研究所にて音声・音響信号の研究,特に福祉情報工学分野の研究に従事. 電子情報通信学会福祉情報工学研究会専門委員.2004年電子情報通信学会HCGヒューマンコミュニケーション賞受賞.電子情報通信学会,ヒューマンインタフェース学会,日本特殊教育学会各会員