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最終更新日:2003.11.28

4.2研究会の改革案

 

 平成6年度からの実施された領域制のもとで財政的に裏打ちされた自主的な運営がなされているが、多様な研究会の存在に対して現在の一律の運営方法には限界がある。また、諸活動との連携や、研究会の統廃合については、研究会(領域)自らでは対応しきれない現実が生じている。
 諸活動との連携、および研究分野の求心力向上については領域制を発展させた前項第2ステップの改革が有効と考えられるが、ここでは研究会のフレキシブルな運営と、研究会の統廃合について以下のとおり提言を行い、研究会活動の活性化を目指す。

4.2.1現状と問題点(再掲)

  1. 27研究会の乱立
    • 類似研究会が多く同好会的になっていないか。
    • 情報処理学会内、他学会間での多数の同様な研究会の開催
  2. 1500件の研究発表論文
    • 欧米から全く見えない日本語論文 → 国際化意識の必要性
    • 査読なしの掲載 → 査読付き論文集発行によるSIGの権威向上の必要性
    • 大量の紙資料:経費、人件費等の負担大 → 電子化への対応の必要性
  3. 研究報告(資料)発行義務によるフレキシブルな運営の足かせ → 電子化対応の必要性
    • 経費予算の70%は印刷費であり、研究会は予算計画に基づく運営を行わねばならない。
    • 印刷経費予算計画に縛られ、タイムリーな企画に対応できない。
  4. 産業界や社会のニーズを汲み取った取り組みができているか。
  5. 研究会の新設の課題:時代の要請に沿った研究会の新設がされていない。
  6. 研究会の統廃合の課題:研究会自らが統廃合を提起することは極めて困難。

4.2.2改革案

4.2.2.1分野別論文誌の発行 ★詳細は前2項参照

[研究会に期待される効果]
  1. 査読付き論文集の発行による研究会の権威の向上
  2. 研究会のグループ分けが、新体制への再編成に向けて自ずから促されることへの期待

4.2.2.2個々の研究会に即したフレキシブルな運営(ボトムアップな研究の流れ)

 研究会の実状、性格に即した運営の体制作りは、制約に対する不満から生じる類似研究会の分派・乱立を防ぐためにも、また時代のニーズに合せたタイムリーな研究会の企画実施体制を整えるためにも早期対応が必要である。
 前項の研究会の分野別論文誌の発行に伴い、研究会登録費の負担軽減のため、通常の研究発表会資料の電子化を行うが、これは研究会にとっては資料印刷のために予算枠にはめられた現在の運営から解放され、個々の研究会に即した運営の可能性も向上すると考えられる。

  1. 研究発表会資料の電子化による改善−印刷廃止による計画予算上の制約からの解放−
    1. 発表方法の改善
      1. 現行の研究発表会方法の変更
      2. 資料の印刷を廃止、発表会発表者は、開催前にWeb上に概要程度を掲載
      3. 発表会当日は、発表者がコピーを会場へ持参。
    2. 期待される効果
      1. 印刷廃止による計画予算上の制約から解放され、フレキシブルな対応、時代のニーズに合せたタイムリーな企画実施の可能性が向上する。
      2. 財務的軽減:年約4000万円減(全研究会が電子化し自主運営した場合)★6頁参照
    3. 実施に当たっての課題
  2. 研究グループ制度の活用
     より機動的な研究活動のために、現行の研究グループ制度(独立採算)を活用させる。
     「研究グループは、確立された分野を対象とした研究会とは別に、ある特定分野の研究開発を短期間集中的に行うとか、新しい研究分野となり得る萌芽的研究など、より自由で機動性に富んだ研究活動を促進することを目的とする。」(研究グループ現行規定より)

*実施段階における参考:第4回研究会将来ビジョン調査委員会議事録(第4項)抜粋

  1. 研究会の開催形態の簡素化・自由化、ワークショップ開催の促進
  2. シンポジウム開催の改革
    1. 研究会へのシンポジウム積極開催の呼びかけ(義務付け)
      [効果] 類似研究会や関連学会の自然な連携、統廃合の促進の効果が期待できる
    2. 産業界との連携が深められるような開催形態
      • 現在のシンポジウムの多くは、研究発表会を多少格上げした程度のものであるが、そうではなく、チュートリアルやワークショップ等の色々な企画を包括的に行い、産業界との連携を深められるような形態としていくことが必要。
      • トランザクションの発行には産業界との接点はあまりないが、実際に人が集まる場は、良い企画が多くなれば産業界の参加も増えてくる。
      • 全国大会はこれを更に拡大し、学生の発表の場も取り入れた内容とすれば良い。

*関連委員会における主な意見は次の通り。

  • 研究会とは本来、あるテーマに興味を持った人が集まって議論・討論を行うためのものであり、現在の本学会の研究会のように年間計画に沿った運営ではなく、もっとフレキシブルに、もっとインフォーマルに、印刷資料などは作らず、草の根的な活動で良いものである。一方で、この草の根的な研究会から洗練されて出てきたものについて、高度な内容から初心者が参加できる内容まで含めたシンポジウムを行う等の研究会の全面的な改革がされないと、社会的ニーズに応えられるような場として研究会が認識されるようにはならない。
  • 権威あるシンポジウムを一方で行えれば、研究会は予稿集も登録制度も止めて、印刷物を作りたくなったら作って、他は電子的に対応する自由な運営が望ましい。発表会当日は、会場にコピーを持ち寄って発表・議論をする程度のもので良い(論文はなくすが発表の場は提供する)。論文は事前にWWWに登録させることが必要である。(ICC1(H8.9))
  • 学会としては、あるガイドライン(予算枠等)だけを示して、後はうまくインフラを整備して、研究会の多様な運営・自由に任せれば良い。(ICC1(H8.9))
  • 電子化等に対応できない地方会員や、異分野を主な活動の場とする会員が存在する。しかし、そうした会員に合わせて電子化等の全体の進展を遅らせるのは得策ではない。そうした会員のケアはまた別の方法でカバーしていくべきである。(ICC1(H8.9))
  • 著作権を扱うような実務的なものと、アカデミックなものを一律に「研究会」と呼ぶにはその位置づけが難しい。(ICC1(H8.9))

4.2.2.3時代に即した研究会の新設・統廃合(トップダウン的な研究の流れ)

 社会の情報化の進展に伴い、ソフト・ハードのみならず、情報を利用する側の情報の扱い・内容に問題が拡大移行している現状を見すえて、研究分野を開拓し、時代の要請に沿う研究会の新設が望まれる。また、研究会の統廃合については領域でも検討を重ね、各研究会のキーワードを客観的判断材料として真剣な議論を行ってはいるが、一度設立された研究会について研究会(領域)自らが統廃合を提起することは極めて困難な状況である。

  1. 技術の流れを捕らえた研究会の機動的な新設。例えば、
    1. 知的所有権問題を扱う研究活動(*平成9年度に研究グループ新設)
    2. 企業のエンジニア対象の実務的研究活動
    3. 標準化の問題を扱う研究活動(情報企画調査会活動との関連を含む)
    4. その他関連周辺分野を考慮した新分野 等
  2. 時代の要請に合わなくなった研究分野の整理
  3. 上記に対応するための研究分野の拡大・深度化に対する進路の模索等の検討・提言を行える委員あるいは委員会の設置(現状では調査研究運営委員会(委員)がその役割を担い、研究分野の調整を取れるようであれば望ましい(将来的には、学術研究委員会(仮称)に移行))。

*関連委員会における主な意見は次の通り。

  • 研究会を組織するならば、もう少しコーディネートしてその分野の研究者を満足させる方向を考えるべきではないか。現状はいくつも同じような研究会がパラレルに動いていて、フラストレーションが溜るばかりのような気がする。(ICC1(H8.9))
  • 同じような研究会を作るのではなく、例えば大きなDPS(マルチメディア通信と分散処理)研究会が一つあって、大きなミッションを明確にさせれば良い。育てようと思えばそれ程たくさんの研究会を作れるわけがなく、各研究会のミッションを明確にすることは他学会に対しての権威付けにもなる。(ICC1(H8.9))
  • 領域毎に性格の異なる以上、新設、統廃合についても各領域毎に一律でない対応も必要ではないか。例えば、社会環境に併せて新設、統廃合が簡単にできるような領域もあれば、学会の中核を担うような半永続的な領域があってもよい。)(CS3(H7.11))
  • 会員の立場からは、また似たような研究会ができるということは好ましいことではない。細かな乱立は避けて、トピックを取り入れ、母体研究会の拡大・活性化を図ることが本筋ではないか。
     周辺分野を傘下に取込みつつ研究会活動を活性化していく方針があれば、 連絡会内に目的別WGを組織し、研究分科会のようなものを作る等、活性化のために連絡会をうまく機能できる。(CS6(H8.9))