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最終更新日:2007年6月27日

重点計画-2007(案)に関する意見

 

 このたび本会では、内閣官房IT担当室に対し、以下の通り提言を提出いたしましたのでご報告いたします。

参考)「重点計画−2007(案)」に関するパブリック・コメントの募集について

会長 佐々木 元


デジタル署名アイコン重点計画-2007(案)に関する意見(デジタル署名付PDF)

内閣官房IT担当室 殿

「重点計画−2007(案)に関する意見」

2007年6月26日
(社)情報処理学会
会長 佐々木 元

該当分野:(1)重点計画−2007(案)全般に係る意見

■該当ページ: 重点計画−2007(案)全体
意見の概要: 実践的高度IT人材の資質指標作りと育成に取り組むことの重要性

意見(本文):
 近年の航空機、鉄道、通信の情報システム事故が与えた影響からも理解できるように情報システムはまさに社会インフラとして機能しています。そのような状況において、今般の「重点計画−2007(案)」において、国民を中心としたシステムとしての設計が基本方針に明記されています。国民を中心とした暮らしの電子情報サービスシステム設計を最適に実現するには、少なくとも政府および地方自治体での調達の意思決定者や責任者および受託側の意志決定者や責任者が、本計画で述べられている高度IT人材としての資質を備えていることが必須であります。
 (社)情報処理学会は、アカデミックソサエティおよびプロフェッショナルソサエティの2つの連携活動を核としており、上記の実践的高度IT人材の資質指標作りと育成に、積極的に取り組んでいくものであります。

 

該当分野:(12)2.2 国民視点の社会保障サービスの実現に向けての電子私書箱(仮称)の創設

■該当ページ:16
意見の概要:住民基本台帳ネットと電子私書箱の相互連携

意見(本文):
 年金問題とも絡んで、このようなポータルサイトの必要性は広く認識されることである。
 一方、既に始まっている住民基本台帳ネットとの関係が懸念される。後者は更に電子文書法と関係して、既に税申告などの電子申請に使われているが、電子私書箱のために新たなIDとパスワードとカードが配布される可能性がある。せめて相互に連携できるような仕組みが必要。


該当分野:(14)2.4 ネット上の違法・有害情報に起因する被害の抜本的減少を目指した集中対策の実施

■該当ページ:20-21
意見の概要:認証技術導入時及びアップロード時のプライバシー保護技術の確立

意見(本文):
(1) 有害サイト運営者による利用者の年齢確認について、本人の申告に従うしか方法はなく、年齢詐称されると実質的な効果が無いのが現状である。この問題の解消には、年齢等の属性を、第三者の保証(国や事業者など)を担保として確認する認証技術を導入することが有用である。しかし一方で、認証技術導入にあたっては、プライバシー保護の視点を考慮して進める必要があるとともに、不正な出会い系サイトなどが、女子児童のプロファイル(年齢情報など)を収集・目的外利用する等、プロファイルを違法に利用できない技術的な対策も併せて検討する必要がある。現状では、このような技術は確立されておらず、プライバシーを保護しながら、年齢などの属性を認証する技術を確立するための、研究開発を実施することが望ましい。

(2) 未成年による有害情報へのアクセスについて、2.4節では、当該情報の閲覧を目的としたダウンロード方向のアクセスを問題視している。しかしながら、昨今、プロフィールサイト(プロフ)に自身の個人情報を書き込むなど、危険性の認識が欠如した情報発信が顕在化しつつある。また、携帯電話から出会い系サイトに書き込んだり、掲示板に自分の写真を掲載するといった、未成年が有害情報を発信する事件も起きている。
(http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/net/news/p20070314org00m040036000c.html)
 このようにアップロードする情報についても、未成年のプライバシー情報を保護するための方法や施策が必要になる可能性も高い。アップロード方向でのプライバシー情報の流出の現状分析を行い、技術的に流出を防止する手法を検討する必要がある。

 

該当分野:(14)2.4 ネット上の違法・有害情報に起因する被害の抜本的減少を目指した集中対策の実施

■該当ページ:21
意見の概要:情報モラル教育は「お説教」だけでは有効性がないので、技術的側面の影響まで含めた総合的な内容を取り上げて頂きたい

意見(本文):
「(ウ)情報モラル教育の推進 a)学習指導要領の改訂」
 現在の高等学校普通教科「情報」指導要領には「情報モラル」という用語は使われていないが、既に情報技術の進展が社会にどのような影響を与えているかを考えさせる内容が含まれている。本計画が実行される際にこの内容をさらに拡充することになると思われるが、単に「モラル・マナーに注意すべき」ということを追加するだけでは実効性に薄い。「情報技術の発展により(従来はなかった)このようなことができるようになり、その結果としてこのような問題が起きている」という形で系統的な知識を学ぶ内容となるよう配慮頂きたい。小学校・中学校についても (発達段階に応じた配慮は必要だが)同様に考える。

意見の概要:情報モラル教育のための教員に対する情報提供手段として、高校では「情報」教員全体に対する系統的な教員研修を含めて頂きたい

意見(本文):
「(ウ)情報モラル教育の推進 b)情報モラル教育の推進」
 指導手法の検討や取りまとめは確かに重要であるが、現場の教員は多忙でありこれらの情報を吟味し取り込む余裕がないのが現状である。また、「情報モラル」の指導であっても技術的側面との関連まで含めて指導できる必要があり、教員が学んでおくべき内容が多く存在する。このため、高等学校の「情報」教員を対象として、「情報モラル」に限らず「情報」全体に関する系統的な研修(たとえば2週間程度)を 実施し、その期間は受講者は校務などから解放され新たな知識を取り込むことに専念できる形としていただきたい。また、そのための人的・資金的手当をお願いしたい。

 

該当分野:(19)3.3 高度IT人材育成の好循環メカニズムの形成

■該当ページ:32-35
意見の概要:現場を見据えた実効性のある人材育成プログラムの確立と情報系専門教育カリキュラム標準J07の連携

意見(本文):
(総論)
・骨太な重点計画を期待する
 高度IT人材育成は高等教育から企業内の技術者育成まで連続的に取り組むべき課題である。しかし、「高度IT人材の好循環メカニズムの形成」では、類似した人材育成施策が併記されているように思われる。このため、重点政策としての柱が見えない。

・ITの現場を見据えた実効性のあるプログラムの必要性
 一般に、IT業界の開発現場は極めて繁忙であり、高度IT人 材育成の施策が実施されても、多くの技術者は教育プログラムに参加できないのが現状である。実質的には、現場の技術者には、教育や人材育成の路が閉ざされている。特に、高度IT人材となりうる、いわゆる「仕事ができる人」ほど、現場で学ぶ時間を取れない実態がある。
 また、派遣社員の増大により、教育訓練の機会の欠如、低スキルIT技術者の増大の問題があると考えられる。これは、メディアなどで、ITの現場の「悲惨な実態」(例えば[1])が喧伝されることは枚挙にいとまがない。この結果、学生のIT離れを加速し、理工系大学離れからIT業界離れに至る、国全体が「IT離れ」の負のスバイラルを形成している。

[1]「派遣プログラマーとなり..(中略)..残業は月200時間に上るが、残業代は支払われず、月給は27万円程度。」,エコノミスト,「娘、息子の悲惨な職場」,2007年6月19日号,p.29.

 この実態を直視し、取り組まない限り、本重点施策の実効性には疑問がある。現場の技術者に教育訓練の機会をもたらす効力のある施策が必要である。たとえば、政府調達に参画する技術者には、年間一定時間以上、スキルに応じた教育研修プログラムの受講を義務付けることである。

・IT産業の構造改善の必要性
 IT技術者が社会的にもその価値が認知され、経済的な面でも相応に遇されるようにIT産業がその構造を改善して優れた人材を惹きつけるものとする必要がある。高度IT人材の育成のための施策も、それに応募して自ら能力を高め、その結果をIT産業で発揮したいと望む有能な人材が集められなくては有効には機能しえないからである。
 こうしたIT産業の構造改善を促進するには、IT技術者の技術力評価の仕組みの確立とそれに基づく資格制度の導入、公共調達に対する開発に携わる技術者を一定技術力保持(確立された技術力評価制度・資格制度に基づく)者に限定する制度の導入が必要である。

(各論)
「(4)人材流動性の活性化等」
 大学側と産業界側とのミスマッチの解消を目標として、(1)においては大学・大学院での教育に産業界との意見交換・相互協力の施策がうたわれているのに対し、産業界側でのIT人材の研修や継続教育の施策については、こうした産学の相互協力の仕組みに触れたものがない。現場で働く技術者の研修や継続教育に大学の専門教育のカリキュラム標準に基づく教育が活用される道を開く施策の立案・実施も必要である。大学教員が産業界での研修・継続教育に参与する仕組みを導入することは、大学の教員が現場を知る機会にもなり、また、産業界にとっても体系的なITの専門教育を受けずに実務についている技術者に系統的な研修を提供する機会にもなる。

「(ア)スキル標準およびスキル標準研修ロードマップの更なる普及
a)人材の知識・能力に関する産業統一のスキル評価基準の策定等」
 現在のIT業界の採用では、情報系の高等教育、とりわけ、ソフトウェア工学教育の履修者が少ないことから、初級のスキルの獲得を企業内新入社員研修に依存している。しかし、その内容は企業により大きく異なるのが実情である。この新人レベルのスキルは、いわば、情報系学科の大学卒業レベルであると想定できることから、カリキュラム標準(情報処理学会で策定中の国際カリキュラム標準に基づく「情報系専門教育カリキュラム標準J07」)に基づくスキル水準を策定し、それに基づく、エントリレベルの情報処理技術者試験の早期実施と企業における新入社員の当該スキル水準獲得の推進施策の実施が重要である。特に、現行のスキル標準は、スキルのカタログとプロジェクト規模による評価基準に基づいているため、スキルの育成やその評価を行なう上で適切であるとはいえない。上記カリキュラム標準と連続性があり産学で適用可能なスキル標準となるよう、見直しを図る必要がある。

■該当ページ:32
意見の概要:現状では、大学入学時点までに情報技術に関心を持った生徒をすくい上げて専門教育を施すという視点がないので追加願いたい

意見(本文):
「(1)高等教育における教育の実質化」
 今日でも高校までの段階で情報技術に関心を持ち、高度IT人材となる素質を持った生徒が多く存在しているが、その多くが必ずしも情報専門学科に進学しないという問題が存在している。これを解消するため、大学入試センター試験に教科「情報」の試験を追加し、また多くの大学においても「情報」による入学試験が選択可能とすることにより、素質を持った人材が高等教育に進みやすくし、また高度な勉強に進むことを促すことが望ましい。よって、そのような項目を追加願いたい。

■該当ページ:34
意見の概要:情報処理技術者エントリレベル試験においては、単純な知識や論理的能力だけでなく、手順的な自動処理の活用能力も見て頂きたい

意見(本文):
「(4)人材流動性の活性化等(イ)情報処理技術者試験の更なる普及」
 エントリレベル試験の内容について、現在は初級シスアドを土台とすることで議論されているが、そこにはプログラミング関係の内容が含まれていない。情報処理技術者として力を発揮するには、実際にプログラムを書くか否かに係わらず、プログラムに類する「手順的な自動処理」を理解し使いこなす能力が必須である。そのため、ぜひとも「手順的な自動処理」の能力を含めた試験を実施願いたい。

■該当ページ:34
意見の概要:初等中等教育におけるIT活用能力の伸長に際しては、一般的な問題解決に留まらず手順的な自動処理の活用能力も対象として頂きたい

意見(本文):
「(5)初等中等教育における改革(ア)ITに関する能力の伸長 a)学習指導要領改訂に向けた見直し」
 現状の文面では「ITを用いた問題解決能力」が重視されているが、IT技術者として活躍する上では、実際にプログラムを書くか否かに係わらず、プログラムに類する「手順的な自動処理」を理解し使いこなす能力が必須である。そのため、ぜひとも「手順的な自動処理」の能力も伸長すべき内容に含めて頂きたい。

■該当ページ:35
意見の概要:産業界・大学等が先進的カリキュラムを実施するための土台として、全生徒に手順的な自動処理の体験を持たせて頂きたい

意見(本文):
「(5)初等中等教育における改革(ア)ITに関する能力の伸長 b)初等中等教育段階からの高度IT人材の早期育成」
 2,000名を対象とした高度な教育を有効に実施するには、そのための準備のできた生徒を集めることが必須である。しかし現在は、このようなカリキュラムを実施しても一般的に言えば優秀だがプログラミングの経験のない生徒が推薦されてくる等の実情があり、有効に機能していない。これを克服するには、小・中・高校の各段階において手順的な自動処理の体験を全生徒に持たせ、それがどのようなものであるかを理解させた上で、特に素養・興味のある生徒がそのことを自覚し、自らの意思で高度なカリキュラムに応募するようにする必要がある。ここで必要と考えるのは数時間の「体験」であり、素質・興味のある生徒がそれに触発されて自ら学び始め、自分の素質を認識するようにさせることが目的である。

■該当ページ:35
意見の概要:IT能力の底上げとして「環境」「教育方法」にとどまらず 「教育内容」の見直し・強化を含めて頂きたい

意見(本文):
「(5)初等中等教育における改革(イ)ITに関する能力の底上げ」
 現在列挙されている項目a)はITを活用した教育方法の改善、b)はIT環境の整備であるが、肝心の「ITに関する能力を底上げする教育内容」については含まれていない。既に小・中・高に存在している「総合的な学習の時間」「技術・家庭(技術分野)」「情報」の時間を活用し、現在の「使い方中心」の情報教育を改めて(i)技術的内容まで含めて系統的に教えること、(ii)小・中・高の各段階で手順的な自動処理の体験を持たせること、によって初等中等教育を経てくるすべての国民の「情報水準」の底上げをめざして頂きたい。

 

該当分野:(24)1.3 世界に誇れる安全で安心な社会

■該当ページ:53
意見の概要:安全な社会の実現において最も有効に働くはずなのは教育である。このため安全教育に関する内容を追加して頂きたい

意見(本文):
「(5)犯罪の生じにくい社会の実現」
 現在挙がっている項目は技術的な方策が中心であるが、犯罪防止に最も有効に働くのは教育のはずである。このため、小・中・高の情報教育を通じて、情報安全教育に関する系統的な内容を必須として頂きたい。ここで情報安全教育とは、情報技術の安全性に関する側面、セキュリティ技術に関する側面、個人の行動(マナー、モラル)に係わる側面などを総合して扱うことを想定している。

 

該当分野:(27)1.6 IT経営の確立による企業の競争力強化

■該当ページ:71
意見の概要:CIOやIT活用人材が活躍できるためには、これらの人材を育成する具体的手段と社会的認知の向上が必要

意見(本文):
「(2)ITを活用できる人材の育成支援」
 CIOやIT活用人材が活躍するためには、まずこれらの人材を育成する必要があるが、現在の内容にはその具体的な育成方法が含まれていない。具体的な育成方策として、(i)大学入試に情報・情報技術の内容を含めることで、これらの内容に素養・関心を持つ人材が高等教育に進みやすくすること、(ii)多くの大学の教育課程において、副専攻として情報・情報技術に関する内容が学習できるように各大学の科目・カリキュラムを改善すること、(iii)社会に出ている人材が情報・情報技術に関する内容を改めて学ぶことができるよう、社会人大学院を充実させ、その情報提供を行い、またそこで再教育を受ける社会人およびそれを認める企業に対する経済的支援を行うこと、を含めて頂きたい。また、CIOやIT活用人材が活躍する上では、社会全体がそのような人材の存在や価値について正しい認識を持つことが必須である。そのため、(iv)CIOやIT活用人材とはどのようなスキルを持ちどのような業務をこなす人材であるかが社会に正しく認識されるよう、学校における情報教育内容の充実と社会に対する広報を推進するべきである。

 

該当分野:(32)2.3 世界一安心できるIT社会

■該当ページ:96
意見の概要:情報セキュリティ教育の強化のために、小・中・高における情報教育の内容として情報安全教育を含めて頂きたい

意見(本文):
「(4)個人におけるIT利用不安の解消(1)情報セキュリティ教育の強化・推進」
 指導事例や情報提供も重要であるが、情報セキュリティについて小・中・高等学校の各段階できちんと教育を行うことがもっとも重要であると考える。このため、小・中・高の情報教育を通じて、情報安全教育に関する系統的な内容を必須として頂きたい。ここで情報安全教育とは、情報技術の安全性に関する側面、セキュリティ技術に関する側面、個人の行動(マナー、モラル)に係わる側面などを総合して扱うことを想定している。

■該当ページ:98
意見の概要:模範となるインターネット利用環境の実現のため、すべての児童・生徒がきちんと情報安全教育を受けるようにして頂きたい

意見(本文):
「(6)世界の模範となるインターネット利用環境の実現」
 インターネット利用環境をよいものとする上で有効な手段は教育である。学校教育において、規範や安全などについてきちんと学んでおけば、そこから知らずに安易な考えで逸脱することを少なくできるからである。このため、小・中・高の情報教育を通じて、情報安全教育に関する系統的な内容を必須として頂きたい。ここで情報安全教育とは、情報技術の安全性に関する側面、セキュリティ技術に関する側面、個人の行動 (マナー、モラル)に係わる側面などを総合して扱うことを想定している。

 

該当分野:(33)2.4 次世代を見据えた人的基盤づくり

■該当ページ:101
意見の概要:学校に対する外部サポート体制に加えて、学校内部でのシステム管理についても相応の人的・経済的支援をお願いしたい

意見(本文):
「(1)学校におけるIT基盤の整備(2)学校システム担当外部専門家(学校CIO)等のサポート体制の在り方の検討」
 学校が持つ情報システムは大多数の生徒にとって初めて身近に接する情報システムであり、それがきちんと管理・運用・支援されていることを見せることは重要である。そのためには、CIOによる統一された運用指針も重要だが、日常の管理・運用についても、常駐の(校内の)担当者と外部サポートの双方が適切に協力して行われていることが重要である。とくに、現状では情報教育を担当する教員がシステム管理に忙殺されていて情報教育に時間・労力を割けないという実情が多くあり重大な問題となっているため、これを解消することが急務である。具体的には、情報教育の担当者による管理を原則として廃止し、校内の情報システムをきちんと管理できるだけの要員の配置(図書館に対する司書に相当するような専門家の配置)と、外部からの日常的支援のための資金(保守契約などの資金) の予算処置をお願いしたい。

意見の概要:教員のIT活用指導力を向上させるため、教員自身に指導方法だけでなく情報・情報技術の本質的理解を持たせるようお願いしたい

意見(本文):
「(2)教員のIT活用指導力の向上(1)教員のIT活用指導力の向上」
 十分なIT活用指導力を持たせるには、教員に個別の教育技術・技能を持たせるだけでなく、情報・情報技術自体に対するきちんとした理解を持たせることが必須である。というのは、IT活用による指導自体が、生徒に情報・情報技術の適切な理解を持たせるという側面も期待されているからである。このため、小・中・高等学校の教員を対象とした、網羅的・系統的な情報・情報技術の研修を実施すべきと考える。加えて、研修期間中は本務先の校務からは離れて学習に専念できるような体制・人的支援を強くお願いしたい。

 

該当分野:(34)2.5 世界に通用する高度IT人材の育成 −産学官連携 体制の構築−

■該当ページ:104-106
意見の概要:高度IT人材の育成と資格制度及び育成教員の確保

意見(本文):
 IT人材の育成にまつわる産学のミスマッチを解消するための産学官連携の取組みが始まったのをいっそう進めるべく高度IT人材育成の好循環メカニズムを形成するための総合的・集中的な取組みが必要である、とする基本方針は大いに歓迎するところであり、具体的施策としてすでに上げられているものが推し進められることを期待したい。
 ところで、人材育成が一朝一夕に成るものではないことに留意する必要があることを指摘したい。育成される立場にある人間、育成する立場にある人間だけを考えるのでは不十分であり、育成された人材が正当にその力量を発揮できる場の確保、そうした力量を発揮した成果を高く評価して受け止める社会環境の醸成も、また、施策の中に含めておく必要がある。
 育成された人材が力量を発揮できる場の確保ということでは、人材の資格制度を導入し、国あるいは公的機関での調達や、社会基盤の根幹となる部面でのシステム構築に当たっては、その応募条件として一定資格をもつ人材を要求することが、結局のところ、有効な施策となる。こうした資格制度の展開をこの項にも含める必要がある。
 同様に、人材育成にあたる教員をどのように確保するのか、育成するのかも重要な要点である。特に、初等中等教育段階からの早期育成を掲げるにあたっては、その教員の確保・育成についても施策をたてる必要がある。
 これらについての詳細コメントは、「3.3 高度IT人材育成の好循環メカニズムの形成」の対応する項目につけたものを参照願いたい。

以上