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最終更新日:2010年12月7日 |
「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望 |
会長 白鳥 則郎
このたび本会は,「デジタル教科書」推進に際してのチェックリストの提案と要望(以下)を12月7日に文部科学省生涯学習政策局に提出いたしました. |
最終更新日:2010年11月1日 |
理数系学会教育問題連絡会に加盟する上記諸学会は、「デジタル教科書」 「デジタル教材」推進に際して、世界的に見て低くない我が国の教育水 準を維持し、さらに向上させるために、必要と思われる事項のチェック リストを作成致しました。 現在、関係各位において「デジタル教科書」「デジタル教材」(以下、単 に「デジタル教科書」と記します)推進に向けての議論が進められている ことと理解しております。理数系諸学会においても、今日の情報・通信 技術により実現可能となった「デジタル教科書」の活用は、教育におけ る重要な課題でありかつ、将来にわたってわが国の教育を高めていく上 で必須のものであると理解しており、それぞれ、その教育における活用 に取り組んで行きたいと考えています。 しかしながら、「デジタル教科書」は、あくまでも教育の手段であり、 目的とするのは教育を高めていくことであるのを忘れてはなりません。 特に初等中等教育における「デジタル教科書」の活用に関しては、生徒・ 児童の発達過程およびその教育内容との関連についてこれまでに行われ てきた検討・試行・研究を、技術の進化を踏まえて、さらに深めていく 必要があります。 このような考えから私たちは、「デジタル教科書」活用に向けての具対 策が、教育そのものを高めていくという目的に適ったものになっている ことを確認するため、下に示すとおりの9項目のチェックリストを作成致 しました。このチェックリストは、理数系諸学会が「デジタル教科書」 の活用に向けて活動する際に配慮すべき事項をまとめるという趣旨で作 成したものですが、関係各位におかれましても、「デジタル教科書」の 推進にあたっては、常にその施策が、本チェックリストの全項目を満た していることを確認されますように、強く要望いたします。
事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時
間の縮減につながらないこと。
事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみ
で科学的事項の学習とすることが無いこと。
事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使っ
て考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。
事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働か
せて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。
事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題に
よる演習の比率増大につながらないこと。
事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考え
や意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。
事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション
化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識
の植え付けが起きないようにすること。
事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視
されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配
慮すること。
事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、
現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準と
すること。
付記1 健康上の問題点に関する検討上に記した以外の点として、情報機器の長時間にわたる使用が、児童生 徒の視力をはじめとする身体能力やその発達に悪影響を与える可能性に ついての懸念について指摘しておきます。私供はこの分野の専門家では ないため、この件については事項として挙げませんでしたが、研究開発 校など限定的な範囲において、十分に時間をかけた調査を実施すること により、デジタル教科書が子供たちの健康に悪影響をもたらさないかど うかについて、まずは検証することが、デジタル教科書導入の教育効果 について考える前段階として必要だと考えます。 付記2 児童・生徒のプライバシーに関する検討「デジタル教科書」に関連して、すべての児童・生徒の学習行動を電子 的に記録・集約・保管して学習指導に役立てるという考えがあります。 これが教育上有益であり得ることには異論ありませんが、当然ながらこ のようなデータは高度なプライバシー情報です。児童・生徒ならびに保 護者が認める者だけがこれらのデータにアクセスでき、また児童・生徒 ならびに保護者がデータに対する制御を持つこと(必要な時に自分のデー タを利用できるようにすること、またその意思に基づいてデータが確実 に破棄可能なこと)を確実に保証すべきであり、その保証が行えるまでは 記録・集約・保管を見合わせるべきだと考えます。 付記3 チェックリスト各事項の解説
事項1: 「デジタル教科書」の導入が、手を動かして実験や観察を行う時
間の縮減につながらないこと。
事項2: 「デジタル教科書」において、虚構の映像を視聴させることのみ
で、科学的事項の学習とすることが無いこと。
事項3: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が紙と筆記用具を使っ
て考えながら作図や計算を進める活動の縮減につながらないこと。
事項4: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒が自らの手と頭を働か
せて授業内容を記録し整理する活動の縮減につながらないこと。
事項5: 「デジタル教科書」の使用が、穴埋め形式や選択肢形式の問題に
よる演習の比率増大につながらないこと。
事項6: 「デジタル教科書」の使用が、児童・生徒どうしが直接的に考え
や意見を交換しながら進める学習活動の縮減につながらないこと。
事項7: 「デジタル教科書」の使用により、授業の「プレゼンテーション
化」や、児童・生徒に対するプレゼンテーション偏重・文章力軽視意識
の植え付けが起きないようにすること。
事項8: 「デジタル教科書」の導入に際して、教員の教科指導能力が軽視
されることがないように、また教員の教材研究がより充実するように配
慮すること。
事項9: 「デジタル教科書」の導入に際しては、少なくとも当面の間は、
現行の紙の教科書を併用し、評価や採択においては紙の教科書を基準と
すること。
付記4 参考資料本文の検討に当たっては、さまざまな資料に基づく検討を行いました。 そのなかで本文の各事項に関係が深いと思われるものを、以下に挙げて おきます。
以上 |