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最終更新日:2003.11.28

理事会・総会報告

 

情報処理学会 第45回通常総会報告

 平成15年5月20日(火)午後4時から2時間にわたり,ホテルJALシティ田町・東京(東京都港区芝浦)において,第45回通常総会を以下の通り開催した.出席した民法上の社員(役員および代表会員)は137名であった(うち委任状による出席者は71名,定款第39条による総会成立定数81名).


1.議案の審議承認

 定款第36条に基づき鶴保会長を議長として,下記の議案を審議し,承認した.

第1号議案  平成14年度事業報告について (pdfファイル)

第2号議案  平成14年度決算報告について (pdfファイル) 

         平成14年度監事監査報告 (pdfファイル)   

         ※参考:監事意見 (pdfファイル)

第3号議案  平成15年度事業計画について (pdfファイル)  

         ※質疑に対する回答

第4号議案  平成15年度予算について (pdfファイル) 

第5号議案  一般規則の改訂について (pdfファイル)

第6号議案  会費滞納会員の取扱いについて (pdfファイル) 

第7号議案  名誉会員について (pdfファイル)           

         ※新名誉会員の紹介

第8号議案  平成15年度役員改選について (pdfファイル)  

         ※平成15年度役員名簿はこちら


2.表彰等

平成14年度功績賞の発表と表彰   ※詳細はこちら(近日中に掲載予定) 

平成14年度論文賞の発表と表彰   ※詳細はこちら(近日中に掲載予定)

平成14年度業績賞の発表と表彰   ※詳細はこちら

平成14年度坂井記念特別賞の発表と表彰  ※詳細はこちら

感謝状の贈呈  坂井利之君 「坂井記念特別賞の完結」


3.懇親会

 終了後,坂井利之 第12代会長の乾杯の音頭により懇親会を開き,多数の元役員はじめ先輩を囲み,会員一同の親交を深めた.


*総会における 益田隆司 新会長の挨拶

 会長に選任されました益田です。どうぞよろしくお願いいたします。数分間の時間を与えられました。現在考えておりますことの問題提起、結論のみを申し上げたいと思います。

 定款に情報処理学会の目的は、学術、文化、ならびに、産業の発展に寄与することとあります。原点に戻って、それぞれに関して、1 点ずつ問題提起を申し上げたいと思います。

 第 1 の学術の貢献に関して、現状は、論文誌、研究会の活動とも盛んです。 1 点、私が問題と感じておりますことは、これらの活動がすべて和文である、いいかえれば、国内に閉じているということです。理工系の多くの学会では論文は英文でということが標準になりつつあります。情報処理学会では、ジャーナルとしての位置づけの学会論文誌、それに数年前にはじまり、現在、5 つになっているトランザクションとしての位置づけの研究会論文誌がありますが、これらのすべてが基本的には和文です。研究会が主体的に論文誌を発行する試みは、当時の調査研究運営委員長の安西祐一郎先生のご努力によるところが大きく、素晴らしい活動と思います。その一方で、大学にいる私が強く感じますのは、情報系の大学院学生が論文は国際標準語たる英文で書くものという習慣になっていなくていいのかということです。学会論文誌は和文として残し、研究会論文誌のいくつかの英文化を図って欲しいと強く希望しています。研究会論文誌の発足に至った経緯からするとこのことが容易くはないことは理解しています。当然、これから新規の研究会論文誌は、ぜひ英文化の可能性もお考えいただきたいと思います。ただこのことは企画政策委員会でも継続的に論じられており、研究会の活性化には現状の和文でいいという考えもあり、今後さらに議論を深めたいと考えています。

 第 2 は産業の発展に関する学会の貢献に関してです。会員数は、平成 3 年度をピークに、毎年 500 〜 800 人の割合で企業会員を中心に減少を続けています。汎用機の時代から、パソコン、ワークステーション、ネットワーク、さらに、ユビキタス、さまざまな生活環境品の情報化、ネットワークへの接続の時代を迎えるなかで、大手計算機メーカーの会員が減少する一方で、情報サービス産業で活動する膨大な数の IT 技術者は、入会に至っていないのが現状です。たとえばソフトウェアの企画、設計から実現までに至るソフトウェア工学は企業にとってはきわめて重要です。JISA の佐藤雄二朗さんは、ソフトウェアの開発、維持に係る技術が学問領域として確立されておらず、その知識体系の確立をぜひ情報処理学会と協力して行いたいと話されています。現状の学会は、産業界への貢献という目からみると、危険な状況にあるといえます。学会としての戦略的な取組みが必要です。

 第 3 は、文化、社会への貢献です。情報技術は社会の隅々にまで浸透しています。学会の裾野を広げることも必要です。高校のカリキュラムにも情報の教科の導入が今年から始まりました。中学校でも技術・家庭で情報が教えられています。こういった場の教育者、あるいは、熱心な父兄の方々にも、学会は手を伸ばし、会員、準会員になっていただく努力をしてもいいのではないでしょうか。情報技術の指導だけでなく、情報の本質、情報倫理などに関して、学会が指導的役割を果たすことは価値あることと思います。こういった活動は、学術活動を求めておられる会員の方々の curiosity を満たすものではないかもしれませんが、情報の分野における国を代表する学会としての mission と考えてもいいのではと思います。会員あるいは会員グループの curiosity の満足と 学会の mission のバランスが重要になっています。会員の方々に自由に活動していただくと同時に、学会としてやらねばならぬことは何かを考えたいと思います。

 定款にある学術、産業、文化への貢献に関し、現在考えていることを、1 つずつ申し上げました。これから 2 年間、皆様方のご協力を切によろしくお願い申し上げる次第です。

 最後になりましたが、魅力あふれる会誌に向け、献身的な努力をされている和田英一編集長をはじめとする方々、JABEE の本格的運用に向け活動をされている牛島和夫委員長をはじめとするアクレディテーション委員会、教育委員会を中心とした方々、その他、学会のさまざまな活動に貢献してくださっている方々、そして、学会事務局の方々、どうぞ引き続き、よろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇

*懇親会における 益田隆司 新会長の挨拶

 今日はお忙しいなかをありがとうございます。会長に就任させていただきました益田です。どうぞよろしくお願いいたします。

 1年前春の全国大会で、当時副会長でいらした村岡洋一先生は、情報処理学会の終焉というパネルをなさいました。余談になりますが、最近、終焉と聞きますと、国立大学の終焉を思ってしまいます。先週、法人化法案が衆議院を通 り、国立大学も来年 4 月からは法人化されることになります。役員会とか、経営とか、トップダウンとか、学長リーダーシップとかいう、従来聞き慣れない言葉が落ち着きなく飛び回り、われわれも日々その対応に追われています。

 さて、情報処理学会の終焉のパネルは、情報処理学会は世のニーズに応じて、機動的に動いていますか、しっかりしないと解体されてしまいますよ、という村岡さんの問題提起でした。その背景には、総会でのご挨拶でも申しましたが、企業会員を中心に会員数が激減し、単年度決算は赤字になるおそれがでてきているという現状があります。

 パネリストとして参加された戸田元会長のご提案は実に明快でした。正確に要約できないことを承知した上で私なりにまとめさせていただくことをお許しいただきたいと思います。そのご主旨は、IPSJ には、国内の研究者が一流の論文を投稿しない、いい論文は海外で発表している、IPSJ は学術進歩を狙った団体ではない、活動が日本語で、外国からは見えない、さらに、現状のIPSJ は実務家には魅力がない、という現状の分析から、今後進むべき方向は、IPSJ は、論文は日本語によるものだけでいいと割り切る、IPSJ は学術専門職、産業専門職(あわせて IT プロフェッショナル)の資格認定、教育等その地位向上の役割を増強し、この両方の専門職へ平等なサービス提供を主ミッションとするのがよいというご主旨でした。

 この正確で冷徹な現状分析と論理の展開の明快さに私は大きな衝撃を受けました。現在も受けております。今回、会長に選任され、こういった方向に舵を切れるか。素直に申して、現在の私にはできません。それが成功する確信がもてません。私は大学の理学の世界に 10 数年在籍しました。物理、数学、生物など、国内の大きな学会の活動は、論文誌を含めすべて国際的でした。学内でしばしば開催される大小のワークショップの多くも国際ワークショップでした。 理工を跨ぐ日本化学会も、大学会ですが、和文は廃止され、論文はすべて英文と聞いています。

 いまや情報工学科、情報科学科は、日本の大学すべてに存在しています。私がいま所属する電気通信大学では、情報は、物理、数学、生物、化学よりもずっと巨大な勢力となっています。私は、情報処理学会にも、先ほど申し上げましたような、他の分野の有力な学会と同様、国際的な活動を目指す学会になって欲しいと念じています。無論、その一方で、内心難しいかなと思うこともしばしばあります。ですからトップレベルの大学の方から自分たちの活動の場は海外にある、情報処理学会は大学院学生に学位を取得させるための論文発表の場でいいんだよというような話を聞かされますと辛い、淋しい気分になります。

 明るい話題もたくさんありますが、ある側面では、情報処理学会の終焉というパネルがなされる程、学会は難しい時期に立たされています。ほんとうの危機に直面する前に、いかに変身を図るかが経営です。戸田元会長は明快な方向を提案されました。現時点では、私はそこまでは割り切れないのが悔しいところです。先ほどの総会でも申し上げましたが、学会員の方々の curiosity を大事にしながら、学会としてなすべき mission を戦略的に設計する、会員のcuriosity と組織の mission のバランスをどうとるかということに焦点を合わせ、学会運営に携わりたいと考えています。

 最後に、まちがいなくいえることは、学会は、幅広い交流が提供できる場です。情報処理の研究は、大学の研究者によって行われる研究であっても、産業、あるいは、社会と密接に関係していることが多くあります。大学と産業、社会の研究の融合に関して意見交換ができる最適の場としての役割が果たせる努力をしたいと思います。交流を盛んにすることは、人材の流動性、社会の開放性を高めることにも貢献します。皆様方の暖かいご支援を心からお願い申し上げる次第です。本日はご参加いただきたいへんありがとうございました。

以上