情報処理学会ホームに戻る
最終更新日:2005.5.20

平成16年度研究開発奨励賞の表彰

 

 本会では,「坂井記念特別賞」資金終了による完結にともない,その主旨を受継ぎ平成15年度より優秀な若手研究者を顕彰するため,「研究開発奨励賞」を設置いたしました. 本賞は,情報処理の学術・技術に関わる分野でその研究開発に特に顕著な貢献が認められ,今後の進歩,発展が期待される39歳までの研究・開発者を対象としています.

 本年度の受賞者は「研究開発奨励賞候補者推薦書」により推薦された候補者の内から,表彰規程および研究開発奨励賞候補者選定手続に基づき,白鳥副会長を委員長とする選定委員会において厳正な審査を行い,第506回理事会(平成17年3月)の承認を得て,下記の3君に決定されました。
 受賞者には,本会表彰規程により,5月20日に開催された第48回通常総会において,表彰状および賞金が授与されました。



張山 昌論

張山 昌論 君(正会員)

「リアルワールド知能システム用プロセッサの開発」

 1992年東北大学工学部電子工学科卒業.1994年同大学院情報科学研究科博士前期 課程修了.1997年同大学院情報科学研究科博士後期課程修了,同年, 同大学院情 報科学研究科助手,2003年より同大学院情報科学研究科助教授となり,現在に至 る.博士(情報科学).1997年日本工業新聞社先端学生論文優秀論文賞,1998年 財団法人青葉工業振興会 研究奨励賞,2001年トーキン科学技術振興財団 研究奨 励賞,2002年 3月28日 電子情報通信学会学術奨励賞各賞受賞.ロボティクス及び画像処理のためのシステムLSI,LSIの最適設計理論,リコンフィギャラブルコ ンピューティングの研究に従事.情報処理学会,電子情報通信学会,電気学会, ロボット学会,計測制御学会,IEEE学会会員

[推薦理由]
 我が国の急速な高齢化や労働力不足を背景に,家庭用サービスロボット,高安全知能自動車に代表される人間をサポートする知能システムが望まれている.張山昌論君は,知能システムの“頭脳”にあたるプロセッサを実現するために,知能アルゴリズム,プロセッサアーキテクチャ,電子回路技術の各階層からの一貫した高性能化を実現する手法を構築した.その結果,従来のコンピュータの数千倍の高速化を達成する多種多様な高性能プロセッサの開発に成功した.その成果は,学術的価値のみならず,今後の日本産業の中心となるデジタル家電用プロセッサなどにも有用となり,産業界への波及効果も絶大である.

 

牧野 和久

牧野 和久 君(正会員)

「離散列挙問題に対するアルゴリズムの研究」

平成 4年3月 京都大学工学部数理工学科卒業,平成 6年3月 同大学院工学研究科 数理工学専攻修士課程修了,平成 9年3月 同大学院工学研究科 数理工学専攻博士後期課程修了(工学博士),平成 9年4月 大阪大学大学院基礎工学研究科 助手,平成 12年4月 同講師,平成 14年3月 同助教授,現在に至る.AAAI-2002 Outstanding Paper Award,第18回 日本IBM科学賞,Discrete Applied Mathematics誌 の Editors' Choice (1999年,2003年 ),第32回 日本オペレーションズ・リサーチ学会 文献賞,平成10年度 電子情報通信学会 論文賞,平成16年度 情報処理学会 山下記念研究賞,第2回 船井情報科学奨励賞などを受賞.

[推薦理由]
 牧野和久君は,離散アルゴリズムの設計と解析に関する研究,ならびに, 人工知能分野における知識表現・推論 や分散システムの制御などへの 離散的手法の応用研究を行い,国際的に非常に高い評価を受けている. 中でも顕著な業績は、離散列挙問題に対するアルゴリズムの研究であり, 特に「論理関数の双対化」と「推論補完」に関する業績は,計算機科学の 中心的課題での世界的なブレークスルーであり,国際的に大きなインパクトを与えた. これらの問題は,AIや発見科学の根幹で生じる問題であり,牧野君の成果は発見科学における日本の先進性を計算理論の面から支える成果であり,本賞 を贈るにふさわしいものである.

木下 真吾

木下 真吾 君(正会員)

「RFIDプライバシ保護技術に関する研究開発」

 1991年大阪大学基礎工学部物性物理工学科卒業,同年日本電信電話株式会社に入社.以来,分散フォールトトレラントシステム,リライアブルマルチキャストプロトコル,セキュリティ応用の研究開発に従事.現在,NTT情報流通プラットフォーム研究所主任研究員.1998年DiCoMoベストプレゼンテーション賞受賞,2003年CSS2003優秀論文賞受賞.情報処理学会,電子情報通信学会会員.

[推薦理由]
 ユビキタス社会を支える基盤技術としてRFID技術に期待が高まっている一方で,その優れた読取能力の悪用によるプライバシ侵害も問題視されはじめている.木下真吾君は,こうした問題の解決に向けて低コストと安全性を両立させる軽量暗号方式の研究開発に従事している.さらに国際的なRFID研究機関Auto-IDセンターでの活動や,国内における業界ガイドラインの作成,書籍や記事の執筆などでも活躍しており,国内外から高い評価を受けている.また,方式研究にとどまらずプロトタイプ開発を通した実証評価など実用性向上への貢献も大きく,RFIDの安全安心な普及促進にむけ,今後一層の活躍が期待される.