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最終更新日:2003.11.28

「IT戦略会議への提言」提出のご報告
会長  長 尾 真  

 

このたび本会では、第455回理事会(平成12年7月27日)においてITの分野に責任を持つ専門家の集団として、政府IT戦略会議に対し関連5学会と共同で提言を行うことを決定し、以下の通り、8月22日に最終提言をとりまとめ、9月7日にIT戦略会議 出井伸之議長に提言を提出いたしました。提言内容とともに、これを広く一般に周知するために行った記者会見の概要を併せてここにご報告いたします。

  1.提言の共同提出6学会
  2.提言提出の概要
  3.提言文書内容
  4.提言の補足的説明
  5.記者発表概要


1.提言の共同提出6学会

 (社)情報処理学会、(社)電子情報通信学会、日本ソフトウェア科学会、言語処理学会、(社)人工知能学会、日本認知科学会

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2.提言提出の概要

日 時  平成12年9月7日(木)14:00〜14:30
会 場  SONY(株)本社
出席者    
○IT戦略会議:出井伸之議長  
○提言学会:長尾 真(本会会長)、村岡洋一(本会副会長)、石黒辰雄(電子情報通信学会および人工知能学会会長代理)、土居範久(日本ソフトウェア科学会理事長代理)、田中穂積(言語処理学会会長代理)、石崎 俊(日本認知科学会会長代理)

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3.提言文書内容

平成12年8月22日

IT戦略会議 議長 出井 伸之 殿

社団法人 情報処理学会  会長 長尾  真
社団法人 電子情報通信学会  会長 青木 利晴
日本ソフトウェア科学会  理事長 武市 正人
言語処理学会  会長 辻井 潤一
社団法人 人工知能学会  会長 白井 良明
日本認知科学会 会長 大津由紀雄

IT戦略会議への提言

 我々の学会はITの研究者・専門職業人の集まりであり、日本のITの研究開発と普及のための基盤を支えてまいりました。我々はITの分野に責任を持つ専門家の集団として、これからのITの発展と普及のために努力を続けていく所存であり、政府のIT戦略会議に対して、以下の提言をいたします。

1. 国としてITの教育・普及活動を重点項目とするよう要請する。関連学会はその活動を支援する。
2. 健全な情報化社会へ向けての法整備などを進めるように要請する。関連学会は情報倫理などの啓蒙活動を推進する。
3. ITに関する人材養成(研究開発・利用の両面において)に対して国の、より一層の努力を要請する。
4. 電子商取引など、ネットワーク上の各種システムの安全性、機密保持性などを確保する技術の開発への国の十分な投資を要請する。
5. ITの将来を切開く研究開発への国の十分な投資を要請する。
6. ITに関する大学などにおけるベンチャービジネス育成への国の支援を要請する。
7. IT戦略会議、あるいはその下部の委員会からの諮問に応じ、会議に貢献する。

以上

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4.提言の補足的説明(※報道発表時配布資料より)

提言1  
○ITを発展させ、社会で広く利用されるようにするためには、ITの教育と普及活動が大切である。初等中等教育の中でコンピュータリテラシーを教育するための教員は圧倒的に不足している。(産業界から)定年退職した我々の学会員などを、学校のコンピュータリテラシー教育のために学校に派遣するなどの斡旋を学会が積極的に行う用意がある。また地方自治体などが行うITの生涯教育に同様に学会員を斡旋することができる。   
○我々の学会にはIT関係の教育に関する研究会をいろいろと持っていて、IT教育の教材作りなどにアドバイスするなどの協力をすることができる。     
○情報処理学会は最近、準会員制度を作り、研究者ではないがITについて関心を持ち最新の情報を得たいという人達、特に初等中等教育に携わる教員や地方自治体等の職員の入会を歓迎している。

提言2  
○電子商取引きなどでは、情報のやりとり、電子マネーの動き、決済の仕方、本人識別など、多くの複雑な問題があり、こういった分野の法整備をするときにITの知識を欠くことはできない。我々の学会は、こういった法整備作業などに専門家を派遣したり、質問に対して答えるなど、法整備活動を支援する用意がある。     
○我々の学会は、情報倫理に関する研究会などを持ち、学会員の守るべき倫理綱領を定めている。このような情報倫理に関する研究と普及活動を学会の外にまで拡大し、国や地方自治体、その他の組織と共催で情報倫理の講演会やシンポジウム等を開催し、社会に対する普及活動を行う用意がある。     
○複雑な形の情報犯罪などについての事例調査、分析、研究などを要請に応じて行い、その対策を提案する用意がある。

提言3  
○別紙資料(「情報通信産業技術戦略」p.10-11)に示されているように、情報通信分野の研究開発者数は米国に比べ1/3しかなく、欧州諸国に比べても政府系研究者の割合いは目立って低い。
○人材育成の面でも、情報通信分野の卒業生は、日本に比べ、米国は学部卒で1.6倍、修士修了で3.2倍、博士修了で6.2倍の違いがある。これは早急に改善する必要があり、情報通信、情報処理分野の大学、大学院の増強が国の施策として必要である。学生増とともに、それに対応して教員の増、施設設備の増強も必要である。

提言4 
○ネットワーク上の各種システムの安全性、機密保持性などの確保のための研究開発を強化することが不可欠である。暗号理論などで我々の学会員の研究成果で世界的なものがいろいろあるが、これをシステムの中で実用してゆく点では米国が断然リードしており、日本はさらなる研究開発が必要である。

提言5  
○将来のITは臨場感通信(バーチャルリアリティ)やヒューマンインタフェース技術が特に重要であるが、米国は既にARPAその他を通じて、この分野に膨大な研究開発投資をしている。日本はネットワーク技術だけでなく、こういった分野でも大きく引き離されてゆきつつある。

提言6  
○国は最近「未踏ソフトウェア創造事業」などを通じてベンチャー育成を始めたが、こういった事業を継続的に強化してゆくべきであろう。ベンチャー企業が簡単に設立できるよう法や規則の整備が必要である。大学におけるベンチャー教育のための教員、予算などの手当てをすることが期待される。TLOではソフトウェア事業へさらに力を注ぎ、TLOへの国の支援も10年以上継続することが求められる。

提言7  
○IT戦略会議が年内に出すであろう各種の提言(例えば電子政府の推進)を具体化し、実施に移してゆく過程において、多くの難しい技術的問題、システム的問題、法的問題等が生じるが、これらを解決するために我々の学会は種々の側面から支援をする用意がある。

以上

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日  時  平成12年9月7日(木)15:30〜16:45
会  場  高輪プリンスホテル 2F 竹の間
主  催  (前1項6学会参照)
主催側出席者(*:前2項参照)   
  発表:長尾 真*、土居範久*、田中穂積*、石崎 俊*
  司会:村岡洋一* 

  ※石黒辰雄*:都合により欠席

報道関係出席者(19社35名)


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